【解決】 Zabbix: Cannot get value from item の解決方法と原因 | Zabbix トラブルシューティング

Zabbixで「Cannot get value from item」というエラーに直面すると、システムの監視ができていない状況に不安を感じるかもしれません。しかし、ご安心ください。このエラーはZabbix環境で非常によくある問題であり、多くの場合、簡単な手順で解決できます。

この記事では、Windows環境における「Cannot get value from item」エラーの最も一般的な原因と、今すぐ試せる具体的な解決策を、PowerShell/Cmdコマンドを交えて詳しく解説します。落ち着いて一つずつ確認していきましょう。

1. Zabbix: Cannot get value from item とは?(概要と緊急度)

「Cannot get value from item」エラーは、Zabbixサーバーが監視対象のWindowsホストにインストールされたZabbix Agentから、指定されたアイテム(CPU使用率、メモリ、ディスクI/Oなど)のデータを取得できなかったことを意味します。

このエラーは、監視データが途絶えている状態を示しており、システムの異常を早期に検知できないリスクがあるため、緊急度は高いと言えます。しかし、システム自体がすぐに停止するわけではありません。原因を特定し、速やかに対応することで、監視体制を正常に戻すことが可能です。

2. 【最速】今すぐ試すべき解決策

このエラーが発生した場合、まず最初に試すべきは、監視対象のWindowsホストで動作しているZabbix Agentサービスの状態確認と再起動です。ほとんどの場合、Zabbix Agentが何らかの理由で停止しているか、一時的に応答しなくなっていることが原因です。

解決策1:Zabbix Agentサービスの再起動と状態確認

Zabbix Agentサービスが正常に動作していない可能性があります。以下の手順でサービスを再起動し、状態を確認してください。

PowerShellを使用する場合

管理者権限でPowerShellを開き、以下のコマンドを実行します。

# Zabbix Agentサービスを停止
    Stop-Service -Name "Zabbix Agent" -ErrorAction SilentlyContinue

    # Zabbix Agentサービスを開始
    Start-Service -Name "Zabbix Agent" -ErrorAction SilentlyContinue

    # Zabbix Agentサービスの状態を確認
    Get-Service -Name "Zabbix Agent" | Select-Object Name, Status, StartType
    

Statusが「Running」(実行中)になっていれば正常です。もし「Stopped」のままだったり、再起動に失敗する場合は、ログを確認する必要があります。

コマンドプロンプト(Cmd)を使用する場合

管理者権限でコマンドプロンプトを開き、以下のコマンドを実行します。

REM Zabbix Agentサービスを停止
    net stop "Zabbix Agent"

    REM Zabbix Agentサービスを開始
    net start "Zabbix Agent"

    REM Zabbix Agentサービスの状態を確認
    sc query "Zabbix Agent"
    

STATEが「RUNNING」になっていれば正常です。

ログファイルの確認

サービスの再起動後もエラーが解消しない場合、またはサービスが起動しない場合は、Zabbix Agentのログファイルを確認して、エラーの詳細を探ります。Zabbix Agentのログファイルは通常、以下のパスにあります(インストール時に変更している場合はそのパスを確認してください)。

  • デフォルトパス: C:\Program Files\Zabbix Agent\zabbix_agentd.log

PowerShellを使って最新のログを確認するには、以下のコマンドが便利です。

# 最新の50行を表示
    Get-Content "C:\Program Files\Zabbix Agent\zabbix_agentd.log" -Tail 50

    # エラーや警告を示す行を検索(大文字小文字を区別しない)
    Select-String -Path "C:\Program Files\Zabbix Agent\zabbix_agentd.log" -Pattern "error|warning|failed|denied" -CaseSensitive:$false
    

ログに「connection refused」や「timeout」、「access denied」といったメッセージが見つかる場合、次の原因に進んでみましょう。

3. Zabbix: Cannot get value from item が発生する主要な原因(複数)

Zabbix Agentの再起動で解決しない場合、以下の原因が考えられます。

3.1. ファイアウォールによる通信ブロック

監視対象のWindowsホストのファイアウォール(Windows Defender Firewallやサードパーティ製ファイアウォール)が、Zabbixサーバーからの接続をブロックしている可能性があります。Zabbix AgentはデフォルトでTCPポート10050でリッスンしています。

  • 解決策: ZabbixサーバーのIPアドレスからのTCPポート10050への受信接続を許可するルールを追加します。

PowerShellで現在のファイアウォールルールを確認するには、以下のコマンドを実行します。

# TCPポート10050に対する受信ルールを確認
    Get-NetFirewallRule | Where-Object {$_.Direction -eq "Inbound" -and $_.Action -eq "Allow"} | Get-NetFirewallPortFilter | Where-Object {$_.Protocol -eq "TCP" -and $_.LocalPort -eq 10050} | Select-Object RemoteAddress, LocalPort, Protocol
    

ルールがない場合や不適切な場合は、Windows Defender FirewallのGUI(「Windows Defender ファイアウォールとセキュリティが強化されたWindows Defender ファイアウォール」)から設定を確認・変更してください。

3.2. Zabbix Agentの設定ミス

Zabbix Agentの設定ファイル zabbix_agentd.conf (通常は C:\Program Files\Zabbix Agent\zabbix_agentd.conf) に誤りがある可能性があります。特に以下のパラメータを確認してください。

  • Server: ZabbixサーバーのIPアドレスまたはホスト名が正しく設定されているか(アクティブチェック以外の場合)。複数のZabbixサーバーから監視される場合はカンマ区切りで指定します。
  • ServerActive: アクティブチェックを使用している場合、ZabbixサーバーのIPアドレスまたはホスト名が正しく設定されているか。
  • Hostname: Zabbixサーバーで設定しているホスト名と、Zabbix Agentの設定ファイルで設定されているHostnameが一致しているか。

設定ファイルを編集した場合は、必ずZabbix Agentサービスを再起動してください。

3.3. ネットワークの問題

Zabbixサーバーと監視対象ホスト間のネットワーク接続に問題がある可能性があります。PingコマンドやTelnet/Test-NetConnectionコマンドで接続性を確認してください。

  • Ping:
    ping <ZabbixサーバーのIPアドレス>
    ping <監視対象ホストのIPアドレス>
  • Telnet/Test-NetConnection (PowerShell): Zabbixサーバーから監視対象ホストのZabbix Agentポート(10050)への接続性を確認します。
    Test-NetConnection -ComputerName <監視対象ホストのIPアドレス> -Port 10050

    TcpTestSucceeded : True と表示されれば、ポートは開いており接続可能です。

3.4. Zabbix Itemキーの定義ミスまたはサポートされていないアイテム

Zabbixサーバーで設定されたアイテムキーが、Zabbix Agentでサポートされていない、または構文が間違っている可能性があります。特にカスタムアイテムやユーザーパラメータを使用している場合に発生しやすいです。

  • 解決策: Zabbixサーバーのアイテム設定とZabbix Agentのログを確認し、アイテムキーが正しいか、エージェントがそのアイテムを処理できるかを確認します。

3.5. 監視対象ホストのリソース不足

稀なケースですが、監視対象のWindowsホストが極端なリソース不足(CPU、メモリ、ディスクI/Oなど)に陥っている場合、Zabbix Agentが正常に動作せず、データ取得要求に応答できないことがあります。このような状況では、OS自体が不安定になっている可能性も考えられます。

  • 解決策: タスクマネージャーなどでホストのリソース使用状況を確認し、過負荷状態でないかをチェックします。

4. Zabbixで恒久的に再発を防ぐには

一時的な解決だけでなく、将来的に「Cannot get value from item」エラーの再発を防ぐための対策も重要です。

4.1. Zabbix Agentの自動起動設定の確認

Zabbix Agentサービスが、OS起動時に自動的に開始されるように設定されていることを確認してください。これにより、ホストの再起動後も監視が継続されます。

PowerShellで自動起動設定を確認するには:

Get-Service -Name "Zabbix Agent" | Select-Object Name, Status, StartType

StartTypeが「Automatic」(自動)になっていることを確認します。もし「Manual」の場合は、以下のコマンドで変更できます(変更後、サービスを再起動してください)。

Set-Service -Name "Zabbix Agent" -StartupType Automatic

4.2. ファイアウォールルールの定期的なレビューとドキュメント化

意図しないファイアウォールルールの変更によって通信がブロックされることを防ぐため、定期的にルールをレビューし、Zabbixサーバーからの接続を許可するルールが永続的に維持されるようにドキュメント化しておきましょう。

4.3. 監視設定の定期的なレビューとテスト

新しいアイテムやテンプレートを導入する際は、必ずテスト環境で動作確認を行い、本番環境への適用前に問題がないことを確認しましょう。

4.4. Zabbix Agentログの定期的な監視

Zabbix Agentのログ自体をZabbixで監視し、errorwarningキーワードが出現した場合にアラートを発する設定を検討しましょう。これにより、問題が深刻化する前に異常を検知できます。

4.5. Zabbix Agentのバージョン管理とアップデート

Zabbix Agentは定期的にアップデートされ、バグ修正や機能改善が行われています。最新の安定版を使用することで、既知の問題によるエラー発生のリスクを低減できます。

これらの対策を講じることで、Zabbixの監視環境をより堅牢にし、「Cannot get value from item」エラーの発生頻度を大幅に減らすことができるでしょう。一つ一つの手順を丁寧に進め、安定した監視体制を構築してください。