Gitを利用してリポジトリへのプッシュやクローンを行っている際に、「fatal: The remote end hung up unexpectedly」というエラーメッセージに遭遇しましたか? ご安心ください、これは多くのGitユーザーが経験する一般的な問題の一つであり、ほとんどの場合、比較的簡単に解決できます。このエラーは、Gitがリモートサーバーとの通信を予期せず切断してしまったことを意味します。
この記事では、Windowsユーザー向けに、このエラーの概要から、最も速く解決するための具体的な手順、そして恒久的な再発防止策までを、SEOに強く、かつ論理的に解説します。
目次
1. Git: fatal: The remote end hung up unexpectedly とは?(概要と緊急度)
「fatal: The remote end hung up unexpectedly」エラーは、Gitクライアントがリモートリポジトリ(GitHub, GitLab, Bitbucketなどのサーバー)との通信中に、何らかの原因で接続が一方的に切断されたことを示します。例えるなら、電話中に相手が突然電話を切ってしまったような状態です。
このエラーは、通常、以下のような状況で発生しやすいです。
- 非常に大きなファイルをプッシュしようとしたとき
- ネットワーク接続が不安定なとき
- Gitの内部バッファサイズが不足しているとき
- リモートサーバー側で設定されている制限に引っかかったとき
このエラーが発生すると、現在のGit操作(プッシュ、フェッチ、クローンなど)が中断されるため、緊急度は中程度ですが、作業効率に直結するため早急な解決が望ましいです。幸い、次に紹介する簡単な方法で、多くの場合すぐに解決できます。
2. 【最速】今すぐ試すべき解決策
まずは、最も効果的かつ簡単な解決策を試してみましょう。このエラーの多くの原因は、GitがHTTP通信を行う際に使用するバッファサイズが不足していることに起因します。特に、大きなファイルを扱っている場合に顕著です。
解決策1:GitのHTTP POSTバッファサイズを一時的に増加させる
Gitのhttp.postBuffer設定は、HTTP(S)経由でデータを送信する際にGitが使用するメモリバッファの最大サイズを決定します。この値を一時的に増やすことで、大きなファイルのプッシュが可能になることがあります。ここでは、500MBに設定する例を示します。
PowerShellまたはコマンドプロンプトを開き、以下のコマンドを実行してください。
git config --global http.postBuffer 524288000
# コメント: この値は500MB(500 * 1024 * 1024バイト)です。
# 必要に応じて、さらに大きな値(例: 1GBの場合は 1048576000)に調整してください。
# この設定はグローバルに適用されます。
コマンド実行後、再度Gitのプッシュ操作などを試してみてください。この設定変更は、現在のユーザーのGit構成に適用されるため、以降のGit操作に影響します。
もし、特定のプロジェクトのみに適用したい場合は、「--global」を削除し、そのプロジェクトのルートディレクトリで実行してください。
git config http.postBuffer 524288000
# コメント: この設定は現在のリポジトリにのみ適用されます。
3. Git: fatal: The remote end hung up unexpectedly が発生する主要な原因(複数)
前述の解決策で問題が解決しなかった場合、または将来の再発を防ぐために、エラーの根本原因を理解しておくことが重要です。
-
巨大ファイルのプッシュ
最も一般的な原因です。Gitはもともとテキストベースのコード管理に最適化されており、動画ファイル、ZIPアーカイブ、バイナリファイルなどの巨大なファイルを扱うと、プッシュ中にネットワーク帯域やリモートサーバーのタイムアウト制限に引っかかりやすくなります。
-
ネットワーク接続の不安定さ
Wi-Fi接続が不安定な環境、VPN接続の問題、一時的なネットワークの途絶などが原因で、リモートサーバーとの通信が途中で切断されることがあります。これは、特に大容量のデータを送受信しているときに発生しやすくなります。
-
リモートサーバー側の制限
GitHub、GitLab、Bitbucketなどのホスティングサービスには、一度のリクエストでプッシュできるファイルサイズの上限や、リクエストの処理時間に関するタイムアウト設定が存在します。これらの制限を超えた場合に、サーバー側で接続が切断されることがあります。
-
Gitのクライアント側の設定不足
前述の
http.postBufferが小さすぎる場合、Gitクライアントが大量のデータを一度に送信する準備ができておらず、エラーが発生します。 -
プロキシまたはファイアウォールの問題
企業ネットワークなどでプロキシサーバーや厳格なファイアウォールを使用している場合、Gitの通信がブロックされたり、タイムアウトが発生したりすることがあります。プロキシ設定が正しく行われていない場合も同様です。
4. Gitで恒久的に再発を防ぐには
一時的な解決策だけでなく、将来にわたってこのエラーの発生を抑制するための恒久的な対策を検討しましょう。
-
Git LFS (Large File Storage) の導入
巨大ファイルを扱う場合の最も推奨される解決策です。 Git LFSは、大きなバイナリファイルをGitリポジトリの外で管理し、リポジトリにはそれらのファイルへのポインタのみを格納する仕組みです。これにより、リポジトリのサイズを軽量に保ちつつ、巨大ファイルを効果的に管理できます。
導入手順(概要):
- Git LFSのインストール: 以下のコマンドでGit LFSをインストールします。
git lfs install - ファイルの追跡設定: 追跡したいファイルの種類(例:
*.psd,*.zip)を指定します。git lfs track "*.psd" git lfs track "*.zip" .gitattributesのコミット: 上記コマンドで生成された.gitattributesファイルをコミットします。git add .gitattributes git commit -m "Add Git LFS tracking for large files"- 既存の巨大ファイルをLFSに移行(必要であれば): 既存のコミット履歴にある巨大ファイルをLFSに移行するには、より高度な操作が必要になる場合があります。
詳細な使い方は、Git LFSの公式ドキュメントを参照してください。
- Git LFSのインストール: 以下のコマンドでGit LFSをインストールします。
-
ネットワーク環境の改善
可能であれば、安定した有線LAN接続を利用し、Wi-Fiの電波強度やVPN接続の安定性を確認してください。一時的な問題であれば、ネットワーク接続を再起動してみるのも有効です。
-
リモートリポジトリのホスティングサービス側の制限確認
利用しているGitホスティングサービス(GitHub, GitLabなど)のドキュメントを確認し、プッシュできるファイルサイズの上限やその他の制限を把握しておきましょう。制限内で運用することが、このエラーの再発を防ぐ上で重要です。
-
Gitの設定を最適化
前述の
http.postBuffer設定は、グローバルに設定しておくことで、多くのケースで再発防止に役立ちます。また、極端に低速なネットワーク環境でタイムアウトを調整したい場合は、http.lowSpeedLimitやhttp.lowSpeedTimeなどの設定も検討できますが、これはより上級者向けの設定となります。git config --global http.postBuffer 1048576000 # コメント: HTTP POSTバッファを1GBに設定。 -
大きなコミットを分割する
一度に非常に多くのファイルや変更をプッシュしようとすると、エラーが発生しやすくなります。可能であれば、コミットをより小さな単位に分割し、プッシュするデータ量を減らすように心がけましょう。
-
プロキシ設定の確認
プロキシサーバーを介してインターネットに接続している場合は、Gitが正しくプロキシを使用するように設定されているか確認してください。
git config --global http.proxy http://your.proxy.server:port git config --global https.proxy https://your.proxy.server:port # コメント: 必要に応じてプロキシサーバーのアドレスとポートを指定してください。 # プロキシ設定を解除する場合は以下を使用します。 # git config --global --unset http.proxy # git config --global --unset https.proxy
これらの対策を講じることで、「fatal: The remote end hung up unexpectedly」エラーの発生頻度を大幅に減らし、スムーズなGitワークフローを維持できるようになります。