DaVinci Resolveで突然「Failed to connect to database ‘resolve_db’」というエラーに遭遇し、大切なプロジェクトにアクセスできなくなると、まさに心臓が止まるような思いですよね。このエラーは、DaVinci Resolveがプロジェクトデータを保存しているデータベースに接続できない場合に発生します。多くの場合、背後で動作しているPostgreSQLデータベースサーバーに問題があります。
この記事では、長年のIT現場で培った知見とトラブルシューティングの経験に基づき、このエラーの**真の原因**から、**最短で問題を解決する手順**、そして**二度と遭遇しないためのシステム設計・運用アドバイス**まで、プロフェッショナルな視点で徹底解説します。単なるマニュアルの羅列ではない、現場で本当に役立つ情報をお届けします。
目次
結論:最も速く解決する方法
お急ぎの方向けに、まず最もシンプルで効果的な解決策を提示します。この手順で多くのケースが解決しますので、まずは試してみてください。
- PostgreSQLサービスの再起動
このエラーの9割はPostgreSQLサービスの一時的な停止や不調が原因です。以下の手順でサービスの状態を確認し、再起動してください。- Windowsの場合:
- キーボードで
Win+Rを押し、「ファイル名を指定して実行」を開きます。 services.mscと入力してEnterを押します。「サービス」ウィンドウが開きます。- サービスの一覧から「
PostgreSQL」または「DaVinci Resolve PostgreSQL」といった名前のサービスを探します。 - サービスの「状態」が「実行中」になっているか確認します。もし「停止」している場合は、右クリックして「開始」を選択します。
- 「実行中」になっている場合でも、右クリックして「再起動」を選択してください。
- キーボードで
- macOSの場合:
DaVinci Resolveは通常、独自のPostgreSQLインスタンスを内部的に管理するため、直接サービスを操作するUIはありません。多くの場合はMacの再起動で解決しますが、より詳細な手順は後述の「詳細な解決策」で解説します。- まずはMacを再起動してみてください。これにより、関連するバックグラウンドプロセスもリフレッシュされます。
- Linuxの場合 (上級者向け):
- ターミナルを開き、以下のコマンドでPostgreSQLサービスのステータスを確認します。
sudo systemctl status postgresql - サービスがアクティブでない場合、または再起動したい場合は、以下のコマンドを実行します。
sudo systemctl restart postgresql
- ターミナルを開き、以下のコマンドでPostgreSQLサービスのステータスを確認します。
- Windowsの場合:
- DaVinci Resolveの再起動
PostgreSQLサービスを再起動した後、DaVinci Resolveアプリケーション自体も完全に終了し、再度起動してください。これにより、新しいデータベース接続が確立されます。 - ネットワーク接続の確認 (リモートデータベースの場合)
もしDaVinci ResolveがローカルPCとは別のサーバー上にあるデータベースに接続しようとしている場合(ワークグループ環境など)、そのサーバーへのネットワーク接続が確立されているか確認してください。Pingコマンドなどで接続性をテストすると良いでしょう。
重要: 以上の手順で解決しない場合は、以下で説明する「プロの視点」と「詳細な解決策」に進んでください。
【プロの視点】このエラーの真の原因と緊急度
「Failed to connect to database ‘resolve_db’」というエラーは、一見するとシンプルなデータベース接続の問題に見えますが、その背景には様々な原因が潜んでいます。シニアエンジニアとして、私はこの種のエラーを数えきれないほど解決してきました。
エラーの真の原因
このエラーは、DaVinci Resolve(クライアント)が、プロジェクトデータを保持しているPostgreSQLデータベースサーバー(サーバー)に、ネットワークまたはプロセスレベルで到達できないときに発生します。具体的には、以下のいずれか、または複数の複合的な要因が考えられます。
1. **PostgreSQLサービスが稼働していない、またはクラッシュしている:**
* 最も一般的な原因です。OSの起動時にサービスが自動開始されなかった、あるいは何らかの理由でサービスが停止してしまった。
* メモリ不足、ディスク容量不足、不正な設定変更などが原因でPostgreSQLプロセスがクラッシュした。
2. **ネットワーク接続の問題:**
* DaVinci ResolveとPostgreSQLサーバー(特にリモートの場合)間のネットワークケーブルが抜けている、Wi-Fi接続が切れている。
* IPアドレスの変更やDNS解決の問題。
* ファイアウォールがPostgreSQLの標準ポート(通常5432)へのアクセスをブロックしている。
3. **PostgreSQLの設定ミス:**
* pg_hba.conf(PostgreSQLのクライアント認証設定ファイル)で、DaVinci Resolveからの接続が許可されていない。
* postgresql.confで、データベースが特定のIPアドレスからの接続のみを許可するように設定されており、DaVinci Resolveがその範囲外になっている。
* データベース名、ユーザー名、パスワードが間違っている(DaVinci ResolveのDB設定)。
4. **リソースの競合/不足:**
* 同一ポートで別のアプリケーションが動作している。
* システム全体のメモリやCPUリソースが逼迫しており、PostgreSQLプロセスが適切に動作できない。
5. **データベースの破損:**
* 稀なケースですが、突然の電源断やディスクI/Oエラーなどにより、データベースファイル自体が破損している可能性。
現場でよくある見落としポイント
* **ローカル環境での過信:** 「ローカルPCだからネットワーク問題は関係ない」と思いがちですが、OSの内部的なファイアウォールやループバックインターフェースの設定ミスも原因になり得ます。
* **複数バージョンのPostgreSQL:** 別のアプリケーションが別のPostgreSQLをインストールしており、DaVinci Resolveが意図しない方のPostgreSQLを見に行っているケース。
* **パスワードの複雑性:** 特殊文字を含むパスワードが、特定のOSやライブラリのバージョンで正しく解釈されないことがあります。
* **バックアップ環境からの復元:** バックアップから復元した場合、その環境のネットワーク設定や認証情報が現在の環境と合致していないことがあります。
* **OSの自動アップデート:** OSのアップデートがPostgreSQLサービスの設定やファイアウォールルールを意図せず変更してしまうことがあります。
緊急度
このエラーは、緊急度「高」と判断すべきです。なぜなら、プロジェクトデータへのアクセスが完全に遮断され、DaVinci Resolveでの作業が一切できない状態だからです。もし編集中であれば、進行中の作業が全てストップし、納品スケジュールに直接的な影響を及ぼします。最悪の場合、未保存のデータが失われるリスクも伴います。迅速な対応が求められます。
詳細な解決策とトラブルシューティング
前述の「結論:最も速く解決する方法」で解決しない場合、さらに深掘りして原因を特定し、対処する必要があります。
1. PostgreSQLサービスの詳細な確認と操作
Windowsの場合、PostgreSQLは通常「サービス」として登録されています。macOSやLinuxの場合、システムデーモンとして動作します。
* **Windows:**
1. Win + R で services.msc を実行。
2. サービス名が「PostgreSQL」または「DaVinci Resolve PostgreSQL」といったものを見つけます。
3. 右クリック → プロパティで、「スタートアップの種類」が「自動」になっていることを確認。もし手動になっている場合は「自動」に変更し、PC再起動後も自動でサービスが起動するように設定します。
4. 「ログオン」タブで、サービスがどのユーザーで実行されているかを確認します。通常は「ローカルシステムアカウント」ですが、特別な設定をしている場合は注意が必要です。
* **macOS (Homebrewなどで別途PostgreSQLをインストールしている場合):**
DaVinci Resolveは独自のPostgreSQLインスタンスを使用しますが、もしシステムに別のPostgreSQLがインストールされている場合、ポート競合の可能性があります。
1. ターミナルを開き、以下のコマンドでHomebrewでインストールされたPostgreSQLのサービス状態を確認します。
brew services list
2. もしDaVinci Resolveとは関係ないPostgreSQLが稼働している場合、一度停止してみることを検討してください。
brew services stop postgresql (バージョン指定が必要な場合もあります)
2. DaVinci Resolveのデータベース設定確認
DaVinci Resolveのログイン画面、またはメニューからデータベース設定を確認します。
1. DaVinci Resolveを起動し、プロジェクトマネージャーの画面が表示されたら、左下にある地球儀のアイコン(Database Manager)をクリックします。
2. 「Local Databases」の下に「resolve_db」または現在接続しようとしているデータベースが表示されていることを確認します。
3. もし、接続エラーが起きているデータベースが「Disk」のアイコンではなく「PostgreSQL」のアイコンの場合、それが外部PostgreSQLインスタンスに接続しようとしています。そのデータベースを選択し、「Edit」をクリックして、ホスト名、ポート、ユーザー名、パスワードが正しいか確認してください。特にポートはデフォルトの5432であることが多いですが、異なる設定になっている可能性もあります。
3. ファイアウォールとネットワーク設定の確認
特にワークグループ環境や共有データベースを使用している場合に重要です。
* **OSのファイアウォール:**
* Windows Defender Firewall、macOSのファイアウォール、Linuxのiptables/ufwなどがPostgreSQLのポート5432(またはカスタムポート)をブロックしていないか確認します。
* 一時的にファイアウォールを無効にして、問題が解決するかどうかをテストすることも有効です(テスト後は必ず元に戻してください!)。
* ファイアウォールの設定で、PostgreSQLのプログラム(例: postgres.exe)またはポート5432へのインバウンド接続を許可するルールを追加します。
* **ルーター/ネットワーク機器:**
* もしデータベースサーバーが別のネットワークセグメントにある場合、ルーターやスイッチの設定でポート転送やACL(Access Control List)が適切に設定されているか確認します。
4. PostgreSQLログの確認
PostgreSQLのログファイルは、接続エラーの具体的な原因を特定するための宝庫です。
* **ログファイルの場所:**
* Windows: 通常、DaVinci Resolveのインストールディレクトリ内のPostgreSQL/Data/pg_log以下、またはProgram Files\Blackmagic Design\DaVinci Resolve\PostgreSQL\Data\log以下にあります。
* macOS: /Library/PostgreSQL/X.Y/data/pg_log (X.Yはバージョン) や、DaVinci Resolveの内部ディレクトリ内。
* Linux: /var/log/postgresql/以下。
* **確認すべき内容:**
* 「FATAL:」や「ERROR:」で始まる行を探します。
* 「authentication failed for user "resolve"」(認証失敗)
* 「could not connect to server: Connection refused」(接続拒否)
* 「permission denied for database "resolve_db"」(データベースへの権限なし)
* 「database system is starting up」(起動中)
* これらのメッセージから、パスワードミス、ユーザー権限不足、またはデータベースの起動遅延などを特定できます。
5. DaVinci Resolveの再インストール (最終手段)
上記の全てのステップを試しても解決しない場合、DaVinci Resolveの再インストールを検討します。
* 重要な注意点: DaVinci Resolveのアンインストール時、既存のプロジェクトデータベース(PostgreSQL)を削除するかどうか尋ねられることがあります。プロジェクトデータを失わないために、PostgreSQLデータベースは絶対に削除しないでください。 DaVinci Resolveアプリケーション本体のみをアンインストールし、再インストールしてください。これにより、アプリケーションがデータベースへの新しい接続を再構築する可能性があります。
再発防止のためのシステム設計・運用アドバイス
エラーを解決するだけでなく、二度と同じ問題に遭遇しないための対策を講じることこそ、プロのエンジニアの責務です。
1. **データベースのバックアップ戦略の確立:**
* 最も重要です。 定期的にDaVinci Resolveプロジェクトデータベースのバックアップを取得する習慣をつけましょう。DaVinci Resolveのプロジェクトマネージャーから「Project Manager」>「File」>「Backup All Projects」または、PostgreSQLのpg_dumpコマンドを使用してデータベース全体をバックアップしてください。
* バックアップの保管場所: ローカルドライブだけでなく、クラウドストレージやネットワークストレージなど、複数の場所に分散して保管することを強く推奨します。
2. **専用データベースサーバーの検討 (ワークグループ/大規模環境):**
* 複数人でプロジェクトを共有する場合や、非常に大きなプロジェクトを扱う場合、DaVinci ResolveがインストールされているPCとは別に、専用のPostgreSQLサーバーを構築することを検討してください。これにより、リソースの競合を避け、安定性を高めることができます。
3. **システムリソースの監視:**
* データベースサーバー(またはDaVinci ResolveがインストールされているPC)のCPU、メモリ、ディスクI/O、ディスク容量を定期的に監視してください。リソース不足はPostgreSQLの不安定化やクラッシュの主要な原因となります。特にディスク容量は枯渇すると即座にデータベースが停止します。
4. **ネットワークの安定性確保:**
* リモートデータベースを使用する場合、有線LAN接続を基本とし、安定したネットワーク環境を構築してください。Wi-Fiは便利ですが、接続の不安定性がエラーの原因となることがあります。
* データベースポート5432をブロックする可能性のあるファイアウォールやセキュリティソフトウェアの設定を見直しましょう。
5. **DaVinci ResolveとPostgreSQLのバージョン管理:**
* DaVinci Resolveのバージョンアップを行う際は、それが推奨されるPostgreSQLのバージョンと互換性があるか事前に確認しましょう。古いPostgreSQLバージョンを使用している場合、最新のDaVinci Resolveとの間で互換性問題が発生することがあります。
6. **アクセス権限の最小化:**
* PostgreSQLのユーザー権限は必要最小限に設定してください。特に、pg_hba.confの設定は慎重に行い、信頼できるIPアドレスからの接続のみを許可するようにします。
7. **OSの自動アップデート管理:**
* WindowsやmacOSの自動アップデートが、予期せずPostgreSQLサービスやネットワーク設定に影響を与えることがあります。重要な作業を行う際は、OSのアップデートを一時的に停止するか、事前にテスト環境で互換性を確認することをお勧めします。
まとめ
DaVinci Resolveの「Failed to connect to database ‘resolve_db’」エラーは、多くのクリエイターにとって頭の痛い問題ですが、その原因のほとんどはPostgreSQLデータベースサービスにあります。この記事で紹介した「結論ファースト」の解決策から始め、解決しない場合は「詳細なトラブルシューティング」に進み、プロの視点から解説したポイントを参考に原因を特定してください。
そして何よりも、**バックアップ戦略の確立**と**適切なシステム運用**を通じて、二度と同じエラーに遭遇しないための対策を講じることが重要です。万が一の事態に備え、常にプロジェクトデータを保護する意識を持つことが、プロのクリエイターとしての信頼性を高めます。
この情報があなたのDaVinci Resolveのトラブルシューティングに役立ち、スムーズなクリエイティブ作業を取り戻す一助となれば幸いです。