Shopifyストアと連携するアプリケーションやスクリプトを運用していると、「Shopify: Too many requests to API」というエラーに遭遇することがありますよね。突然のAPI停止で業務に支障が出ることもあるでしょう。ご安心ください、このエラーはShopify APIの一般的な挙動の一つであり、適切な対処法を知っていればすぐに解決し、再発を防ぐことも可能です。
この記事では、Windowsユーザーの皆さんがPowerShellやCmdを使ってこの問題を迅速に解決し、将来的にはエラーを未然に防ぐための具体的な手順を解説します。
目次
1. Shopify: Too many requests to API とは?(概要と緊急度)
「Shopify: Too many requests to API」は、その名の通り、短期間にShopify APIへ過剰なリクエストが送信された際に発生するエラーです。Shopifyは、サーバーの安定稼働と公平な利用を保つため、APIの呼び出し回数に「レートリミット(API呼び出し制限)」を設けています。
このエラーが表示されたということは、お使いのアプリケーションやスクリプトが、この設定された制限を超えてAPIを呼び出してしまった状態を意味します。エラーコードとしては、HTTPステータスコードの「429 Too Many Requests」として返されることがほとんどです。
緊急度としては中程度です。API連携が一時的に停止しているため、システムによっては業務に影響が出る可能性があります。しかし、これは一時的な状態であり、ほとんどの場合、リクエストの間隔を空けるだけで回復します。システムのバグや設計ミスが原因でなければ、深刻な問題に発展することは稀です。
2. 【最速】今すぐ試すべき解決策
まずは、最もシンプルで効果的な解決策から試しましょう。多くの場合、これによりすぐにAPI連携が再開されます。
解決策1:リクエストの間隔を空けて再試行する
「Too many requests」エラーは、文字通り「リクエストが多すぎる」ことが原因です。したがって、最も手軽な解決策は、少し時間を置いてから再度APIリクエストを試すことです。
- もし手動でAPIを叩いている場合(例:開発中のテストなど):数分待ってから再度実行してください。
- もし自動化されたスクリプトやアプリケーションがエラーを出している場合:
- 現在実行中のスクリプトやプロセスを一時停止します。
- 数分間(例えば5分〜10分程度)待機します。
- その後、スクリプトやプロセスを再開または再実行します。
PowerShellスクリプト内でエラーが発生した場合に、一時的に処理を停止するコードの例です。
# エラーが発生した場合(例: Try-Catchブロック内など)に、一時的に処理を停止し、再試行を促す
Write-Host "Shopify APIへのリクエストがレートリミットを超過しました。一時停止します..." -ForegroundColor Yellow
Start-Sleep -Seconds 300 # 5分間 (300秒) 待機
Write-Host "待機が終了しました。スクリプトを再開し、Shopify APIへのリクエストを再度試行してください。" -ForegroundColor Green
# ここにAPIリクエストの再試行ロジックを配置
この一時的な待機は、Shopifyのレートリミットがリセットされるのを待つためのものです。ほとんどの場合、これで問題は解消されるはずです。
3. Shopify: Too many requests to API が発生する主要な原因(複数)
一時的な解決策を試した後、根本的な原因を理解することは再発防止のために非常に重要です。このエラーが発生する主な原因は以下の通りです。
- 短期間での大量リクエスト:
最も一般的な原因です。プログラムが短時間でShopify APIに対して大量の呼び出しを行った場合に発生します。例えば、一括データインポート・エクスポート処理や、多数のアイテムを一斉に更新する際に、リクエスト間に十分な待機時間が設けられていないと発生しやすいです。 - リクエストのバッチ処理の欠如:
多数のアイテムを処理する際に、一つ一つのアイテムに対して個別のAPIリクエストを送信していると、あっという間にレートリミットに達します。例えば、1000件の商品を個別にPUTリクエストで更新するような場合です。 - 予期せぬループやエラー:
プログラムのバグや論理エラーにより、APIが無限ループで呼び出されたり、特定のエラー条件で連続して再試行されたりする場合にも、短時間でレートリミットに達します。 - 複数のアプリケーションからの競合:
同じShopifyストアに対して、複数の異なるアプリケーションやスクリプトが同時にAPIリクエストを送信している場合、それぞれのアプリケーションが単独ではレートリミットを超えていなくても、合計で制限を超えてしまうことがあります。 - スリープ/待機処理の不足:
APIリクエスト間に意図的な遅延(スリープ)を設けていないことが原因です。特に自動化スクリプトでは、この処理が非常に重要になります。
4. Shopify APIで恒久的に再発を防ぐには
「Too many requests」エラーの再発を防ぐためには、API利用のベストプラクティスに従い、リクエストの設計と管理を最適化することが不可欠です。以下に、恒久的な解決策をいくつかご紹介します。
4.1. リクエスト間に適切な遅延(スロットリング)を設ける
Shopify APIへの連続した呼び出しの間に、意図的に待機時間を設けることが最も基本的な対策です。これにより、リクエスト速度をShopifyのレートリミット内に収めることができます。Shopifyの一般的なレートリミットは、Shopify APIの公式ドキュメントで確認できますが、通常は1分あたりの呼び出し回数で設定されています。
PowerShellスクリプト内で遅延を設ける例です。
# 例:商品データの一括更新スクリプト
foreach ($product in $productsToUpdate) {
# Shopify APIへのPUT/POSTリクエストを実行するコード
Invoke-RestMethod -Uri "https://$shopName.myshopify.com/admin/api/2023-10/products/$($product.id).json" `
-Method PUT `
-Headers $headers `
-Body ($product | ConvertTo-Json)
# 次のリクエストまで200ミリ秒待機する (1分間に約300回のリクエストが可能)
Start-Sleep -Milliseconds 200
}
APIの応答ヘッダーに含まれるX-Shopify-Shop-Api-Call-Limitを監視し、動的に待機時間を調整するような高度な実装も可能です。
4.2. リクエストのバッチ処理またはBulk Operationsの利用
個別のリクエストを多数送信するのではなく、可能な限りまとめて処理する工夫をしましょう。
- REST Admin APIの場合: 一部のエンドポイント(例: 商品のメタフィールド更新など)では、複数のリソースを一度に更新できるバッチエンドポイントが提供されている場合があります。ドキュメントを確認しましょう。
- GraphQL Admin APIの場合: GraphQL APIでは、一度のリクエストで複数のクエリやミューテーションを実行する「バッチ処理」が可能です。また、「Bulk Operations」を利用することで、大量のデータを効率的にエクスポート・インポートできます。これは、レートリミットを気にせずに大量データを扱う強力な手段です。
4.3. エラーハンドリングとリトライ処理の実装(指数バックオフ)
429 Too Many Requestsエラーが発生した場合に、単に停止するのではなく、自動的にリトライする仕組みを導入します。この際、単にすぐに再試行するのではなく、待機時間を徐々に長くしていく「指数バックオフ(Exponential Backoff)」戦略を取り入れることが推奨されます。
簡単なPowerShellの例です。
function Invoke-ShopifyApiWithRetry {
param(
[Parameter(Mandatory=$true)]
[string]$Uri,
[Parameter(Mandatory=$true)]
[string]$Method,
[Parameter(Mandatory=$true)]
$Headers,
$Body = $null,
[int]$MaxRetries = 5,
[int]$InitialDelaySeconds = 5
)
for ($i = 0; $i -lt $MaxRetries; $i++) {
try {
Write-Host "Shopify APIリクエスト試行中... (試行回数: $($i + 1))" -ForegroundColor DarkGray
$response = Invoke-RestMethod -Uri $Uri -Method $Method -Headers $Headers -Body $Body
return $response
}
catch {
if ($_.Exception.Response.StatusCode -eq 429) {
$delay = $InitialDelaySeconds * [math]::Pow(2, $i)
Write-Host "レートリミット超過 (429)。$delay 秒待機後、再試行します..." -ForegroundColor Yellow
Start-Sleep -Seconds $delay
} else {
Write-Host "APIエラーが発生しました: $($_.Exception.Message)" -ForegroundColor Red
throw $_.Exception
}
}
}
Write-Host "指定された再試行回数を超過しました。APIリクエストに失敗。" -ForegroundColor Red
throw "Max retries exceeded for API request."
}
# 使用例
# $headers = @{ "X-Shopify-Access-Token" = "YOUR_ACCESS_TOKEN" }
# Invoke-ShopifyApiWithRetry -Uri "https://$shopName.myshopify.com/admin/api/2023-10/products.json" -Method GET -Headers $headers
この関数は、429エラーが発生した場合に、最初の遅延をInitialDelaySecondsとし、その後は2倍、4倍、8倍と遅延時間を増やしながら再試行します。
4.4. レートリミットヘッダーの監視
Shopify APIのレスポンスヘッダーには、現在のAPIコール制限状況を示す情報が含まれています。例えば、X-Shopify-Shop-Api-Call-Limit: 39/40のような形式です。
このヘッダーを監視し、残りのリクエスト数が少なくなったら自動的に処理速度を落とす、あるいは一時停止するロジックを実装することで、よりインテリジェントなレートリミット管理が可能になります。
PowerShellでレスポンスヘッダーを確認する例:
$response = Invoke-RestMethod -Uri "https://$shopName.myshopify.com/admin/api/2023-10/products.json" `
-Method GET `
-Headers $headers -PassThru # -PassThru を付けるとレスポンスオブジェクト全体が返る
$callLimit = $response.Headers."X-Shopify-Shop-Api-Call-Limit"
Write-Host "現在のAPI呼び出し制限: $callLimit"
# 例えば、残りの呼び出し回数が少なくなったら(例: 5以下)
# Start-Sleep -Seconds 5 などの処理を追加する
これらの対策を講じることで、「Too many requests to API」エラーの発生を大幅に減らし、安定したShopify API連携を維持できるでしょう。