iOSアプリケーションの開発中に「App Transport Security (ATS) Error」に遭遇し、不安を感じているWindowsユーザーの皆さん、ご安心ください。
このエラーはセキュリティに関する重要な警告ですが、多くの場合、適切な設定変更で迅速に解決可能です。
この記事では、このエラーの概要から、Windows環境で今すぐ試せる最も速い解決策、そして恒久的な対策までをわかりやすく解説します。
目次
1. iOS: App Transport Security (ATS) Error とは?(概要と緊急度)
結論から言うと、このエラーはiOSアプリが「セキュアではないHTTP接続」を試みた際に発生する、Appleのセキュリティ機能による警告です。
Appleは、ユーザーデータの保護とプライバシーの強化のため、iOS 9からApp Transport Security (ATS) を導入しました。ATSは、アプリケーションがインターネット上のリソースと通信する際に、デフォルトでHTTPS(HTTP Secure)接続を義務付けるものです。つまり、アプリが「HTTPSではないHTTP」を使ってデータを送受信しようとすると、ATSがそれをブロックし、このエラーが発生します。
緊急度としては、開発中によく発生するタイプの警告であり、アプリの実行を妨げるものの、設定を修正することで解消できます。本番環境ではセキュリティポリシーに準拠した対応が必要ですが、開発初期段階であれば一時的な設定変更で進めることが可能です。
2. 【最速】今すぐ試すべき解決策
App Transport Security (ATS) Error に遭遇した場合の最も速い解決策は、プロジェクトのInfo.plistファイルに一時的な例外設定を追加することです。これにより、アプリはHTTP接続を許可されるようになります。
解決策1:Info.plist に一時的な例外設定を追記する
Windows環境でiOSアプリを開発している場合(例: React Native, Flutter, Xamarin など)、プロジェクトのiosフォルダ内にあるInfo.plistファイルを編集します。このファイルは、アプリケーションの基本的な設定情報が含まれるXML形式のファイルです。
ステップ1: Info.plist ファイルを探して開く
まず、プロジェクトフォルダ内でInfo.plistファイルを検索し、テキストエディタで開きます。Visual Studio Codeなどのエディタを使用することをお勧めします。
# 現在のディレクトリ以下でInfo.plistファイルを検索する例
# (プロジェクトの構造によってパスは異なります。一般的には "ios/YourAppName/Info.plist" にあります)
Get-ChildItem -Path . -Recurse -Filter "Info.plist" | Select-Object FullName
# 検索したInfo.plistファイルをVisual Studio Codeで開く例 (VS Codeがインストールされている場合)
# 例: "C:\Users\YourUser\YourProject\ios\YourApp\Info.plist" が見つかった場合
# code C:\Users\YourUser\YourProject\ios\YourApp\Info.plist
# あるいは、Windowsのメモ帳で開く
# notepad C:\Users\YourUser\YourProject\ios\YourApp\Info.plist
ステップ2: Info.plist に設定を追記する
開いたInfo.plistファイルで、<dict>タグの直前(または適切な場所)に以下のXMLスニペットを追記します。この設定は、すべてのHTTP接続を一時的に許可するためのものです。
<key>NSAppTransportSecurity</key>
<dict>
<key>NSAllowsArbitraryLoads</key>
<true/>
</dict>
例えば、ファイルの末尾が</dict></plist>となっている場合、</dict>の直前に上記のコードを追加してください。
変更を保存したら、アプリを再度ビルド・実行してエラーが解消されたか確認してください。
3. iOS: App Transport Security (ATS) Error が発生する主要な原因(複数)
このエラーが発生する主な原因は以下の通りです。
- HTTPSではないHTTPエンドポイントへの接続: アプリがAPIや画像、動画などのリソースをHTTP URL(
http://で始まるURL)から取得しようとしている場合。 - 古いライブラリやSDK: アプリケーション内で使用しているサードパーティ製のライブラリやSDKが、内部的にHTTP接続を行っている場合。特に古いバージョンではATSに対応していないことがあります。
- 開発環境でのローカルサーバー接続: 開発中にローカルで起動しているテストサーバーやAPIがHTTPSではなくHTTPで稼働しており、そこにアプリが接続しようとしている場合。
- WebViewでのコンテンツ表示: アプリ内のWebViewで、HTTPで配信されているウェブページやコンテンツを表示しようとしている場合。
4. iOS/Swiftで恒久的に再発を防ぐには
NSAllowsArbitraryLoadsの設定は、セキュリティリスクがあるため本番環境での使用は推奨されません。開発を終え、アプリを公開する際には、以下の方法で恒久的な対策を講じるべきです。
4.1. 全ての通信をHTTPSに切り替える(推奨)
最も理想的な解決策は、アプリケーションが行う全てのネットワーク通信をHTTPSに切り替えることです。これは、APIサーバーの運営者やコンテンツプロバイダーにHTTPS対応を求めるか、自身で管理しているサーバーであればHTTPS化を設定することによって実現します。これにより、ATSの警告は完全に解消され、ユーザーのデータも安全に保たれます。
4.2. 特定のドメインのみHTTPを許可する
どうしてもHTTP接続が必要な特定のドメインがある場合、Info.plistでそのドメインに対してのみ例外を設けることができます。この方法はNSAllowsArbitraryLoadsよりも安全です。
<key>NSAppTransportSecurity</key>
<dict>
<key>NSExceptionDomains</key>
<dict>
<key>your-http-domain.com</key> <!-- HTTP接続を許可したいドメイン名に置き換える -->
<dict>
<key>NSIncludesSubdomains</key>
<true/>
<key>NSExceptionAllowsInsecureHTTPLoads</key>
<true/>
</dict>
</dict>
</dict>
この設定では、your-http-domain.comとそのサブドメインに対してのみHTTP接続が許可されます。他のドメインへの接続は引き続きHTTPSが強制されます。
4.3. 開発ビルドでのみ例外を適用する
開発環境でのみHTTP接続が必要な場合は、ビルド設定(例: XcodeのBuild Settingsやクロスプラットフォームフレームワークの設定)を使用して、デバッグビルド時のみNSAllowsArbitraryLoadsを有効にし、リリースビルド時にはこの設定を含めないようにする方法も検討できます。これにより、本番環境への意図しないセキュリティリスクの持ち込みを防ぎます。
App Transport Security (ATS) Error は、現代のセキュリティ基準に準拠するための重要な機能です。一時的な解決策で開発を進めつつ、最終的には全ての通信をHTTPS化するか、必要最小限の例外設定に留めるように心がけましょう。