「Excel ran out of resources」というエラーメッセージは、Microsoft Excelが、現在処理しようとしているタスクに対して利用可能なメモリやシステムリソースが不足していることを示しています。これは、Excelが「疲れてしまった」「これ以上は処理できない」と悲鳴を上げているような状態です。
このエラーが表示されても、慌てる必要はありません。多くの場合、一時的なリソース不足であり、作業中のデータがすぐに失われるわけではありません。落ち着いて以下の手順を試すことで、すぐに問題を解決し、作業を再開できる可能性が高いです。
目次
1. Excel ran out of resources とは?(概要と緊急度)
「Excel ran out of resources」は、その名の通り、Excelが利用できるシステムリソース(主にメモリやCPU処理能力)を使い果たしてしまった際に表示されるエラーです。これは以下のような状況で発生しやすいです。
- 巨大なデータセットを扱っている
- 複雑すぎる計算式や多数の参照を持つワークブック
- 複数のExcelファイルや他のアプリケーションを同時に開いている
- Excel自体の一時ファイルやキャッシュが蓄積している
- 使用しているExcelが32ビット版であり、2GBのメモリ制限に達している
このエラーは通常、アプリケーションのクラッシュやフリーズを引き起こしますが、深刻なハードウェア障害を示すものではありません。緊急度は中程度で、適切な対処を行うことで比較的早く復旧できますが、未保存のデータがある場合は注意が必要です。
2. 【最速】今すぐ試すべき解決策
まずは以下の簡単な解決策を上から順に試してみてください。これらの方法で多くの場合、問題は一時的に解消され、作業を続行できるようになります。
解決策1:Excelを再起動する (強制終了を含む)
最も手軽で効果的な方法です。Excelを一度終了し、再度開くことで、蓄積された一時メモリが解放され、クリーンな状態でExcelを再起動できます。もしExcelが応答せず、通常の方法で閉じられない場合は、タスクマネージャーから強制終了します。
手順:
- 作業中のExcelファイルをすべて保存(可能な場合)。
- Excelを閉じる。
- 再度Excelを開き、問題のファイルを開く。
Excelが応答しない場合の強制終了(PowerShell / コマンドプロンプト):
タスクバーを右クリックして「タスクマネージャー」を開くか、以下のコマンドを実行します。
taskkill /f /im excel.exe
このコマンドは、実行中のすべてのExcelプロセスを強制的に終了させます。実行後、再度Excelを開いてください。
解決策2:PCを再起動する
Excelだけでなく、システム全体の一時的なリソース不足が原因である可能性も考慮し、PC自体を再起動することも非常に有効です。これにより、Excel以外のすべてのアプリケーションやバックグラウンドプロセスがリセットされ、メモリが完全に解放されます。
手順:
- 開いているすべてのファイルを保存し、すべてのアプリケーションを閉じる。
- Windowsのスタートメニューから「電源」アイコンをクリックし、「再起動」を選択する。
解決策3:不要なアプリケーションやExcelブックを閉じる
同時に多くのアプリケーションやExcelブックを開いていると、システムリソースが圧迫されます。現在使用していないものは閉じて、Excelに割り当てられるリソースを増やしましょう。
手順:
- 使用していないWebブラウザのタブ、PDFビューア、画像編集ソフトなどを閉じる。
- 開いている複数のExcelブックの中で、今作業に不要なものを閉じる。
3. Excel ran out of resources が発生する主要な原因(複数)
上記で一時的に解決しても、根本的な原因を知ることで再発防止につながります。このエラーは主に以下の要因が複合的に絡み合って発生します。
- メモリ不足: PCの物理メモリ自体が少ない、または多数のアプリケーションが同時に起動していてExcelに割り当てられるメモリが不足している。
- 32ビット版Officeの制限: 32ビット版のMicrosoft Officeは、たとえPCのメモリが豊富でも、アプリケーションが利用できるメモリが最大2GBに制限されています。大規模なデータや複雑な計算を扱う場合、この制限にすぐに到達してしまいます。
- 複雑な計算と大量のデータ:
- 多数の行・列にわたる巨大なデータセット。
- 揮発性関数 (例:
OFFSET,INDIRECT,TODAY,NOW) の多用。これらの関数は、ワークシートが変更されるたびに再計算されるため、パフォーマンスに大きな影響を与えます。 - 複雑な配列数式やVLOOKUP/MATCH/INDEX関数の広範囲な使用。
- 多数のオブジェクトや書式設定:
- グラフ、画像、図形などのグラフィックオブジェクトが大量に埋め込まれている。
- 多数の条件付き書式、データ検証ルール、ピボットテーブル、スライサーなど。
- Excelアドインの競合または不具合: 導入しているアドインがメモリを大量に消費したり、他のプロセスと競合したりしている場合があります。
- 破損したExcelファイル: ファイル自体に破損や不整合があり、それがリソースの異常消費につながることもあります。
4. Microsoft Excelで恒久的に再発を防ぐには
このエラーの再発を防止し、快適にExcelを利用するためには、以下の対策を検討してください。
4.1. 32ビット版から64ビット版Officeへの移行を検討する
これは、大規模なデータや複雑なワークブックを扱うユーザーにとって最も効果的な解決策です。32ビット版Officeは2GBのメモリ制限がありますが、64ビット版OfficeはPCの物理メモリをほぼ無制限に利用できます。
現在のOfficeが32ビット版か64ビット版かを確認する方法:
- Excelを開き、「ファイル」タブをクリック。
- 左側のメニューで「アカウント」を選択。
- 「Excelのバージョン情報」をクリック。
- バージョン情報ダイアログの先頭行に「Microsoft Excel for Microsoft 365 MSO (16.0.xxxx.xxxx) 32ビット」または「64ビット」と表示されます。
もし32ビット版を使用しており、PCのメモリが4GB以上搭載されている場合は、64ビット版への移行を強くお勧めします。Officeの再インストールが必要になりますので、事前にバックアップとOfficeのアクティベーション情報を確認してください。
4.2. Excelブックの最適化
ファイル自体の構造を見直すことで、リソース消費を抑えることができます。
- 不要なシート・行・列の削除: 使用していないデータやシートは削除しましょう。Excelは目に見えない範囲にもデータを保持していることがあります。
- 揮発性関数の使用を最小限に:
OFFSET,INDIRECTなどの関数は、可能な限りINDEX,MATCHなどに置き換えましょう。 - 複雑な計算式の簡素化: 配列数式や巨大な数式のセル範囲を見直し、分割したり、ヘルパー列を使用したりして簡素化します。
- グラフィックオブジェクトの整理: 不要な図形、画像、グラフは削除し、必要な画像は圧縮してファイルサイズを小さくします。
- 条件付き書式やデータ検証ルールの見直し: 不要なルールは削除し、適用範囲を最小限に抑えます。
- 外部参照の確認: リンク切れや不要な外部ファイルへの参照を整理します。
- 計算モードの設定: 頻繁に大規模な変更を行う場合は、一時的に「手動」計算に設定し、必要な時にF9キーで再計算させることも有効です(「数式」タブ > 「計算方法」 > 「手動」)。
4.3. PCのシステムリソースを増強する
- RAMの増設: 物理メモリ(RAM)を増やすことで、PC全体でより多くのアプリケーションをスムーズに実行できるようになります。
- 高速なSSDへの移行: ストレージがHDDの場合、SSDに換装することで、ファイルの読み書き速度が向上し、Excelの起動やファイルの開閉が速くなります。
4.4. アドインの精査と管理
導入しているExcelアドインが原因でリソース不足に陥ることもあります。必要のないアドインは無効化するか、アンインストールを検討してください。
手順:
- Excelを開き、「ファイル」タブをクリック。
- 左側のメニューで「オプション」を選択。
- 「Excelのオプション」ダイアログで「アドイン」を選択。
- 管理ドロップダウンで「Excelアドイン」を選択し、「設定」をクリック。
- 不要なアドインのチェックを外し、「OK」をクリックしてExcelを再起動します。
これらの対策を講じることで、「Excel ran out of resources」エラーの発生を大幅に減らし、より効率的かつ安定してExcelを利用できるようになるでしょう。