【解決】 Data integrity check failed の解決方法と原因 | RAID/NAS トラブルシューティング

RAID/NASシステムで「Data integrity check failed」というエラーに直面されたとのこと、ご心配のことと存じます。このメッセージは、RAIDS/NAS内のデータに整合性の問題が発生していることを示唆しており、データ損失のリスクがあるため、迅速な対応が必要です。

しかしご安心ください。多くの場合、適切な手順を踏むことでこの問題を解決し、大切なデータを守ることができます。まずは結論からお伝えします。このエラーが発生した場合、NAS/RAIDシステムの管理画面から「データスクラビング」または「整合性チェック」を実行することが、最も速く、かつ一般的な解決策となります。

1. Data integrity check failed とは?(概要と緊急度)

「Data integrity check failed」(データ整合性チェック失敗)は、RAIDアレイやNAS(ネットワーク接続ストレージ)システムにおいて、保存されているデータの整合性に問題があることを示す重要な警告です。

  • 概要: RAIDシステムは通常、パリティ情報(データの冗長コピー)を用いてディスク障害時でもデータを再構築できるように設計されています。このエラーは、実際のデータとパリティ情報との間に不一致が生じていることを意味します。簡単に言えば、「このデータは壊れているかもしれない、または整合性が取れていない」という状態です。
  • 緊急度: 非常に高いです。このエラーを放置すると、以下のような深刻な問題に繋がる可能性があります。
    • データが完全に破損し、アクセス不能になる。
    • 別のディスクが故障した場合、データが完全に失われる(RAID崩壊)。
    • システム全体のパフォーマンス低下。

    そのため、発見次第、速やかに対応することが不可欠です。

2. 【最速】今すぐ試すべき解決策

Windowsユーザーの皆様がこの問題を解決するために、まず試すべき最も一般的な手順をご紹介します。ほとんどのRAID/NASシステムは、Webブラウザを通じてアクセスできる管理インターフェースを提供しており、そこからデータ整合性の修復作業を行うことができます。

解決策1:NAS/RAID管理画面からのデータスクラビングまたは整合性チェック

この手順は、RAID/NASシステムが自動的にデータの整合性を確認し、不一致を修正するプロセスです。Windows PCのWebブラウザからNASの管理画面にアクセスして実行します。


# NAS/RAID管理画面にアクセスし、データスクラビングを実行する手順

1.  **NAS/RAIDのIPアドレスを確認する**:
    *   NASのユーティリティソフトウェアや、ルーターの管理画面で確認できます。
    *   Windowsのコマンドプロンプトで以下のコマンドを使い、ネットワーク上のデバイスをスキャンしてNASのIPアドレスを探すことも可能です(NASのメーカーやモデルによって応答しない場合があります)。
        ```cmd
        arp -a
        ```
    *   または、NASのメーカーが提供する「NAS Navigator」のような専用ツールを使用してください。

2.  **WebブラウザでNASの管理画面にログインする**:
    *   確認したNASのIPアドレスをWebブラウザ(例: Google Chrome, Microsoft Edge)のアドレスバーに入力し、Enterキーを押します。
        例: `http://192.168.1.xxx`
    *   NASの管理者ユーザー名とパスワードでログインします。

3.  **ストレージマネージャーまたはRAID設定セクションに移動する**:
    *   ログイン後、通常は「ストレージマネージャー」「RAID設定」「ディスク管理」といった名前のメニューを探します。

4.  **「データスクラビング」または「整合性チェック」を実行する**:
    *   ストレージ関連のセクション内で、「データスクラビング (Data Scrubbing)」、「整合性チェック (Consistency Check)」、「パリティ再構築 (RAID Rebuild)」などのオプションを探し、実行します。
    *   実行前に、システムの指示に従ってデータバックアップの確認を求められる場合があります。可能であれば、重要なデータは事前にバックアップを取っておくことを強く推奨します。
    *   このプロセスは、RAID構成やディスク容量にもよりますが、数時間から数日かかることがあります。その間、NASのパフォーマンスが低下する可能性がありますが、システムをシャットダウンしないようにしてください。

5.  **プロセスの完了を待つ**:
    *   プロセスが完了すると、通常は結果が管理画面に表示されます。エラーが解消されたかを確認してください。
    

この操作は、ディスクの軽微なエラーやパリティの不一致を自動的に修復することが期待できます。もしこの操作で解決しない場合、より深刻な原因が考えられます。

3. Data integrity check failed が発生する主要な原因(複数)

「Data integrity check failed」エラーは、様々な要因によって引き起こされる可能性があります。主な原因としては以下のものが挙げられます。

  • ディスクの故障または劣化(不良セクタ): 最も一般的な原因の一つです。RAIDアレイ内のいずれかのHDD/SSDに不良セクタが発生したり、故障の兆候が見られたりすると、データの読み書きエラーが発生し、パリティとの不一致が生じます。
  • 不適切なシャットダウンまたは電源供給の問題: 停電や予期せぬ電源オフは、RAIDコントローラーやディスクが正常に書き込み処理を完了する前に中断されるため、データ整合性の問題を引き起こすことがあります。
  • RAIDコントローラーの不具合: RAIDアレイを管理するハードウェアまたはソフトウェアのコントローラー自体に問題が発生すると、誤ったデータ処理が行われ、整合性エラーの原因となることがあります。
  • ファームウェアのバグ: NASデバイスのファームウェアやRAIDコントローラーのファームウェアにバグがあると、特定の条件下でデータ整合性の問題が発生することがあります。
  • メモリの問題: NASやRAIDコントローラーのECC(エラー訂正コード)メモリに問題が発生すると、データ処理中にエラーが発生し、それがデータ整合性エラーとして表面化することがあります。
  • 経年劣化: ハードウェアは時間の経過とともに劣化します。特に複数のディスクを同時に導入した場合、似たような時期に故障の兆候を見せ始める「バスタブ曲線」現象も考えられます。

4. RAID/NASで恒久的に再発を防ぐには

データ整合性エラーの再発を防ぎ、RAID/NASシステムの信頼性を向上させるためには、以下の対策を継続的に実施することが重要です。

  • 定期的なデータスクラビング/整合性チェックの実行:手動または自動で、定期的にNASの管理画面からデータスクラビングや整合性チェックを実行するように設定しましょう。これにより、小さな不整合が大きな問題に発展する前に発見・修正できます。
  • ディスクのSMART監視と早期交換:NASシステムの多くは、HDD/SSDの自己診断機能(SMART)に対応しています。SMART情報を定期的に確認し、不良セクタの増加やエラーレートの上昇など、ディスク故障の予兆が見られた場合は、問題が顕在化する前に新しいディスクに交換することを検討してください。
  • UPS (無停電電源装置) の導入:不意の停電や電圧変動からNASを保護するために、UPSの導入は非常に有効です。これにより、NASが安全にシャットダウンされる時間を確保し、電源関連のデータ整合性エラーを防ぎます。
  • ファームウェアの定期的なアップデート:NASベンダーは、セキュリティの向上やバグ修正のためにファームウェアのアップデートを定期的に提供しています。最新のファームウェアに保つことで、既知の不具合によるデータ整合性問題を回避できます。
  • 適切な冷却と換気の確保:NASは稼働中に熱を発生します。適切な冷却と換気が行われないと、ディスクやその他のコンポーネントの寿命が縮まり、故障の原因となることがあります。設置場所の環境を見直しましょう。
  • 冗長性の確保とホットスペアの検討:RAIDレベルの選択において、より高い冗長性を持つ構成(例: RAID 6)を検討したり、ホットスペアディスクを準備したりすることで、ディスクが故障した場合でもダウンタイムを最小限に抑え、データ保護を強化できます。
  • 定期的なバックアップの実施:どんなに強固なRAIDシステムであっても、絶対的なデータ保護を保証するものではありません。RAIDは「データ保護」ではなく「システム稼働率の向上」が主な目的です。常に重要なデータは、別のストレージ(外部HDD、クラウドストレージなど)に定期的にバックアップを取る習慣をつけましょう。これは、あらゆるトラブルに対する最終的な保険となります。

これらの対策を講じることで、「Data integrity check failed」エラーの発生リスクを大幅に低減し、RAID/NASシステムをより安全に運用できるようになります。