【解決】 Blender: Render error: Out of memory の解決方法と原因 | Blender トラブルシューティング

Blenderで「Render error: Out of memory」というエラーに直面すると、焦ってしまうかもしれません。しかし、ご安心ください。これはBlenderユーザーにとって比較的一般的な問題であり、適切な手順を踏めばほとんどの場合解決できます。このエラーは、Blenderがシーンのレンダリングに必要なメモリ(RAMまたはVRAM)を確保できないときに発生します。この記事では、今すぐ試せる最も速い解決策から、将来的に再発を防ぐためのヒントまで、Windowsユーザー向けに分かりやすく解説します。

1. Blender: Render error: Out of memory とは?(概要と緊急度)

「Render error: Out of memory」は、Blenderが3Dシーンをレンダリングする際に、コンピューターの利用可能なメモリ(RAM: システムメモリ、VRAM: グラフィックカードメモリ)を使い果たしてしまったことを意味します。このエラーが発生すると、レンダリングプロセスが中断され、最終的な画像やアニメーションを出力することができません。

緊急度: 高 – レンダリングが停止するため、作業の進行に直接的な影響を及ぼします。

このエラーは、以下のような状況で発生しやすいです。

  • 非常に複雑なジオメトリ(ポリゴン数が多いモデル)を使用している場合
  • 高解像度のテクスチャを多数使用している場合
  • パーティクルシステムや流体シミュレーションなど、メモリを大量に消費する機能を使っている場合
  • 高解像度(例: 4K、8K)でレンダリングしようとしている場合
  • バックグラウンドで多数のアプリケーションがメモリを消費している場合

まずは落ち着いて、次に紹介する最も簡単な解決策から試してみましょう。

2. 【最速】今すぐ試すべき解決策

解決策1:Blenderのタイルサイズを調整する( Cyclesレンダー向け)

BlenderのCyclesレンダーエンジンを使用している場合、タイルサイズを調整することが最も手軽で効果的なメモリ節約方法の一つです。タイルサイズを小さくすることで、一度にGPUまたはCPUが処理するレンダリング範囲が縮小され、必要なメモリ量が削減されます。特にVRAMが少ないGPUを使用している場合に効果的です。

メリット: 設定が簡単、VRAM消費量を大幅に削減できる可能性がある。


# Blenderでタイルサイズを調整する手順

1.  Blenderを開き、レンダリングしたいシーンを開きます。
2.  画面右上にある「Properties(プロパティ)」エディタに移動します。
3.  「Render Properties(レンダープロパティ)」タブ(カメラのアイコン)をクリックします。
4.  「Sampling(サンプリング)」セクションを展開し、「Viewport(ビューポート)」と「Render(レンダー)」の項目を確認します。
5.  もしBlender 2.8x以降のバージョンでGPUレンダリング(Cycles)を使用している場合、Tile Sizeは通常自動で最適化されますが、手動で変更することも可能です。
    -  「Performance(パフォーマンス)」セクションを展開します。
    -  「Tiles(タイル)」の項目を見つけます。
    -  XとYの値を、デフォルトの2048pxや128px(GPUの場合)から、より小さな値(例: 32px64px、または128px)に変更します。
    -  特にGPUレンダリングでは、32px64px が最適な場合が多いです。CPUレンダリングの場合は、128px から 256px 程度が推奨されます。

    ※ 注: Blender 3.0以降のCycles Xでは、GPUレンダリングのタイルシステムが大きく変更され、タイルサイズを手動で設定するオプションがなくなりました。GPUレンダリングでは自動的に最適なタイルサイズが適用されます。この解決策は主に古いBlenderバージョン、またはCPUレンダリング時に有効です。Blender 3.0以降のGPUレンダリングの場合は、次に説明する「複雑度を減らす」方法や「Persistent Data」の無効化を試してください。

解決策2:バックグラウンドで動作している不要なアプリケーションを終了する

Blenderだけでなく、Windows上で動作している他のアプリケーションもRAMやVRAMを消費しています。それらのアプリケーションを終了することで、Blenderが利用できるメモリを増やすことができます。


# Windowsタスクマネージャーでアプリケーションを終了する手順

1.  キーボードで Ctrl + Shift + Esc を押して「タスクマネージャー」を開きます。
2.  「プロセス」タブをクリックします。
3.  「アプリ」のセクションで、Blender以外の不要なアプリケーション(ウェブブラウザ、動画編集ソフト、ゲームなど)を見つけます。
4.  該当するアプリケーションを選択し、「タスクの終了」ボタンをクリックします。
5.  「バックグラウンド プロセス」のセクションも確認し、メモリやGPUを大量に消費しているプロセスがあれば、それが終了しても問題ないことを確認した上で終了します。

解決策3:Blenderの「Persistent Data」を無効にする

Cyclesレンダーで「Persistent Data」が有効になっていると、レンダリング中にメッシュデータなどがメモリに保持され、複数フレームのレンダリングやアニメーションレンダリングで高速化されます。しかし、メモリ消費量が増大するため、メモリ不足エラーの原因となることがあります。


# BlenderでPersistent Dataを無効にする手順

1.  Blenderを開き、レンダリングしたいシーンを開きます。
2.  「Properties(プロパティ)」エディタに移動し、「Render Properties(レンダープロパティ)」タブ(カメラのアイコン)をクリックします。
3.  「Performance(パフォーマンス)」セクションを展開します。
4.  「Final Render(最終レンダリング)」の下にある「Persistent Data(永続データ)」のチェックボックスをオフにします。

3. Blender: Render error: Out of memory が発生する主要な原因(複数)

メモリ不足エラーの根本的な原因は多岐にわたります。以下の要素が組み合わさって発生することがほとんどです。

  1. シーンの複雑性:
    • 高ポリゴン数: 詳細なモデルやスカルプトされたオブジェクト。
    • 高解像度テクスチャ: 4K, 8Kなどの大容量テクスチャ。
    • パーティクルシステム: 多数のオブジェクトや髪の毛、煙、炎などのシミュレーション。
    • 複雑なシェーダー: サブサーフェススキャタリング(SSS)やボリュームシェーダーなど。
    • 多数のライト: シーン内のライトの数と複雑さ。
  2. レンダリング設定:
    • 高解像度出力: 2K、4K、8Kなどの高解像度での最終レンダリング。
    • 高サンプル数: レンダリングの品質を上げるためにサンプル数を高く設定しすぎている。
    • ボリュームレンダリング: 煙や雲などのボリュームエフェクトは特にメモリを消費します。
  3. ハードウェアの制約:
    • RAM不足: コンピューターに搭載されているシステムメモリ(RAM)が少ない。
    • VRAM不足: グラフィックカード(GPU)に搭載されているビデオメモリ(VRAM)が少ない。特に統合型グラフィックスを使用している場合は顕著です。
  4. バックグラウンドプロセス:
    • 他のアプリケーションやWindowsのシステムプロセスが大量のメモリを消費している。
  5. Blenderのキャッシュ:
    • 物理シミュレーション(クロス、流体など)のキャッシュデータがディスクやメモリを圧迫している。

4. Blenderで恒久的に再発を防ぐには

一時的な対処だけでなく、将来的に「Out of memory」エラーを回避するための恒久的な対策を講じることも重要です。

4.1. ハードウェアのアップグレード(最も確実な方法)

  • RAM(システムメモリ)の増設: 可能であれば、16GB以上(理想は32GB以上)のRAMを搭載することをおすすめします。
  • GPU(グラフィックカード)のアップグレード: より多くのVRAM(8GB以上推奨、大規模シーンでは12GB以上)を搭載した高性能なGPUにアップグレードすることで、特にCyclesでのレンダリング性能と安定性が向上します。

4.2. シーンとオブジェクトの最適化

  • モデルの最適化:
    • Decimate Modifier: ポリゴン数を削減するモディファイアを使用します。
    • インスタンスの活用: 同じオブジェクトが多数ある場合、リンクされた複製(Alt+D)またはCollection Instancesを使用することでメモリ消費を抑えられます。
  • テクスチャの最適化:
    • 解像度の調整: 不必要なほど高解像度のテクスチャは避け、必要なサイズにリサイズします。
    • Packed Texturesの利用: 画像ファイルをBlenderファイルにパックする機能がありますが、これ自体がファイルサイズとメモリ使用量を増やす場合があるため、外部参照を維持することも検討します。
    • 画像形式の選択: メモリ効率の良い形式(例: JPG)を適切な状況で使用します。
  • コレクションの活用と非表示:
    • 不要なオブジェクトやコレクションはレンダリングから除外するか、ビューポートで非表示にするだけでなく、レンダリングからも無効化(カメラアイコンをクリック)します。

4.3. レンダリング設定の最適化

  • レンダー解像度の調整: テストレンダリングでは低い解像度(例: 50%や75%)を使用し、最終レンダリングで必要な解像度に設定します。
  • サンプル数の削減: 「Adaptive Sampling」や「Denoising」を活用することで、少ないサンプル数でも高品質な結果を得られるため、レンダリング時間とメモリを節約できます。
  • ライトパスの最適化: 「Light Paths(ライトパス)」の設定で、不要なパス(例: Volume bounces)の数を減らします。

4.4. ワークフローの改善

  • Blenderの最新版を使用: Blenderは継続的に最適化されており、最新バージョンではメモリ管理が改善されている場合があります。
  • プロキシまたはローポリモデルの使用: ビューポートでは軽いプロキシモデルやローポリバージョンを使用し、レンダリング時のみ高ポリゴンモデルに切り替えます。
  • シーンの分割: 非常に大きなシーンの場合は、複数のBlenderファイルに分割してレンダリングし、後でコンポジットで結合することを検討します。

これらの解決策やヒントを試すことで、「Blender: Render error: Out of memory」エラーを克服し、Blenderでのクリエイティブな作業をスムーズに進めることができるでしょう。焦らず一つずつ試してみてください。