Blenderを使用中に「Out of memory」というエラーメッセージに遭遇しましたか? ご安心ください、これはBlenderユーザーにとって比較的よくある問題であり、多くの場合、簡単な手順で解決できます。このエラーは、Blenderが作業に必要なメモリ(特にグラフィックカードのVRAMやシステムメモリ)を確保できないときに発生します。この記事では、Windowsユーザー向けに、この問題を迅速に解決するための具体的な手順と、再発を防ぐためのヒントを詳しく解説します。
目次
1. Blender: Out of memory とは?(概要と緊急度)
「Blender: Out of memory」エラーは、Blenderが現在のシーンを処理するのに必要なメモリ(RAM)またはグラフィックカードのビデオメモリ(VRAM)が不足していることを示すメッセージです。これは、特に以下のような状況で発生しやすいです。
- 高解像度のテクスチャを多用している
- 非常に多くのポリゴンを持つ複雑なモデルを扱っている
- 大量のオブジェクトやパーティクルシステムが存在する
- 他のアプリケーションが大量のメモリを消費している
- レンダリング設定が非常に高い
このエラーが表示されると、Blenderの動作が停止したり、クラッシュしたりすることがありますが、データが完全に失われるわけではありません。緊急度は高いものの、これからご紹介する対処法で解決可能ですので、落ち着いて対応しましょう。
2. 【最速】今すぐ試すべき解決策
Blenderの「Out of memory」エラーに遭遇したら、まずはPC全体のメモリ状況を改善し、Blenderに利用可能なリソースを最大化することから始めましょう。これにより、多くの場合は一時的な問題が解決されます。
解決策1:他のアプリケーションを終了し、一時ファイルを削除する
Blender以外のアプリケーション、特にWebブラウザ(多数のタブを開いている場合)や他の3Dソフトウェア、ゲームなどは大量のメモリを消費します。これらを終了することで、Blenderが利用できるメモリを増やすことができます。
また、Windowsの一時ファイルを削除することで、ディスクスペースを解放し、システムの安定性向上にもつながります。これにより、間接的にメモリ関連の問題が改善される可能性があります。
手順:
- タスクマネージャーで不要なプロセスを終了する:
Ctrl + Shift + Escキーを押してタスクマネージャーを開きます。- 「プロセス」タブに移動し、Blender以外のCPUやメモリを大量に消費しているアプリケーションやプロセスを探します。
- 対象のプロセスを選択し、「タスクの終了」をクリックして終了させます。
- Windowsの一時ファイルを削除する:
# 1. Windowsの一時ファイルを削除する (Cmd/PowerShell共通)
# これはディスク上の容量を解放し、システムのパフォーマンス改善に寄与する場合があります。
# 注意: 未保存の作業データが含まれている可能性は低いですが、念のため他の重要なファイルを閉じてから実行してください。
del /s /q %TEMP%\*
# 2. ディスククリーンアップツールを起動する (Cmd/PowerShell共通)
# より包括的な一時ファイルの削除を行う場合、以下のコマンドでGUIツールを起動できます。
cleanmgr.exe
これらの手順を実行した後、Blenderを再起動して問題が解決したか確認してください。
3. Blender: Out of memory が発生する主要な原因(複数)
一時的な解決策で改善しない場合、Blenderの「Out of memory」エラーは、以下のような複数の原因が複合的に絡み合って発生している可能性があります。
- 高解像度テクスチャや大量のテクスチャ: 4Kや8Kといった非常に高解像度のテクスチャは、特にVRAMを大量に消費します。シーン内に多数のテクスチャがある場合も同様です。
- ポリゴン数の多いメッシュ(高密度モデル): スカルプトによって作成されたモデルや、CADデータからインポートされたモデルなど、数十万から数百万ポリゴンを持つオブジェクトは、システムメモリとVRAMに大きな負荷をかけます。
- 大量のオブジェクトやパーティクルシステム: シーン内に数千、数万もの小さなオブジェクト(例: 葉っぱ、岩石、草など)や、多数のパーティクル(毛、煙、液体など)が存在する場合。
- 複雑なシェーダーやノードツリー: ノードの連結が非常に複雑なマテリアルや、サブサーフェススキャタリング、ボリュームレンダリングなど、計算量の多いシェーダーはメモリを多く使います。
- レンダリング設定: Cyclesレンダラーでの非常に高いサンプリング数、大きなレンダータイルサイズ、複雑なライトパス設定(特にGI bouncesが多い場合)はメモリ消費を増大させます。
- システムの物理的なVRAM/RAM不足: お使いのPCのグラフィックカードのVRAM容量や、搭載されているシステムメモリ(RAM)が、Blenderの要求スペックや現在のプロジェクトの規模に追いついていない場合。
- 他のアプリケーションによるメモリ消費: Blender実行中に、バックグラウンドでChromeなどのWebブラウザ、他のゲーム、動画編集ソフトなどが大量のメモリを消費していると、Blenderに割り当てられるリソースが不足します。
4. Blenderで恒久的に再発を防ぐには
一時的な解決策でエラーが解消しても、上記のような原因が根本にある場合、同じエラーが再発する可能性があります。Blenderプロジェクトを最適化し、将来的なメモリ不足を防ぐための具体的な方法を学びましょう。
テクスチャの最適化
最も効果的な対策の一つは、テクスチャの解像度を見直すことです。
- 不必要な高解像度テクスチャの縮小: 遠景に配置されるオブジェクトや、ディテールがそこまで重要でない部分に、4Kや8Kといった高解像度テクスチャを使用していないか確認しましょう。Blenderの「画像エディタ」で画像をリサイズするか、外部の画像編集ソフト(GIMP, Photoshopなど)で適切な解像度(例: 2K, 1K, 512px)に縮小してからBlenderに再読み込みします。
- テクスチャのパック解除と再パック: .blendファイルにパックされたテクスチャが原因の場合、一度パックを解除(外部データとして保存)し、不要なテクスチャを削除した後に再度パックし直すことでファイルサイズとメモリ消費を最適化できる場合があります。
- 未使用テクスチャの削除: 「ファイル」>「外部データ」>「未使用データをクリーンアップ」を実行して、シーンで使用されていない画像やマテリアルを削除します。
モデルの最適化
- ポリゴン数の削減(Decimateモディファイア): ポリゴン数の多いオブジェクトには「Decimateモディファイア」を適用し、見た目の品質を大きく損なわずにポリゴン数を減らしましょう。特に見えない部分や遠景のオブジェクトには有効です。
- インスタンスの使用: 同じオブジェクトが多数存在する場合、「Shift + D」で複製する代わりに「Alt + D」でインスタンスとして複製しましょう。インスタンスはオリジナルのオブジェクトデータへの参照を持つため、メモリ消費を大幅に抑えられます。
- ビューポート表示の最適化: 「ビューポート表示」で不要なオブジェクトを一時的に非表示にしたり、Simplify設定(プロパティエディター > シーンプロパティ > Simplify)を有効にして、ビューポートでのサブディビジョンレベルやパーティクル数を制限します。
レンダリング設定の見直し
- サンプリング数の調整: Cyclesレンダラーを使用している場合、「レンダープロパティ」の「サンプリング」数を必要最低限に抑えましょう。ノイズが目立たない範囲で数値を下げることで、メモリ消費とレンダリング時間を短縮できます。
- レンダータイルサイズの設定: GPUレンダリングの場合、通常は大きめのタイルサイズ(例: 256×256, 512×512)が効率的です。CPUレンダリングの場合は小さめのタイルサイズ(例: 16×16, 32×32)が良いとされています。ご自身の環境に合わせて試行錯誤し、最適な値を見つけましょう。
- Simplifyオプションの活用: 「レンダープロパティ」の「Simplify」オプションを有効にすると、レンダリング時とビューポート時のポリゴン数を一括して制限できます。
シーンの管理と階層化
- コレクションの活用: シーン内のオブジェクトをコレクションで整理し、不要なコレクションは一時的に無効(チェックボックスをオフ)にすることで、ビューポートやレンダリング時の負荷を軽減できます。
- 不要なデータの定期的な削除: 定期的に「ファイル」>「外部データ」>「未使用データをクリーンアップ」を実行し、シーンで使われていないメッシュ、マテリアル、テクスチャ、ノードなどを削除しましょう。
ハードウェアのアップグレード検討
上記すべてのソフトウェア的な対策を試しても解決しない場合や、大規模なプロジェクトを頻繁に扱う場合は、ハードウェアのアップグレードも検討する価値があります。特にグラフィックカードのVRAM容量や、PCのシステムメモリ(RAM)を増設することで、Blenderの安定性とパフォーマンスが劇的に向上する可能性があります。
これらの対策を組み合わせることで、「Blender: Out of memory」エラーの再発を防ぎ、より快適なBlenderでの作業環境を構築できるはずです。諦めずに一つずつ試してみてください。