AWS EC2インスタンスが「Instance status check failed」というエラー状態になることは、運用担当者にとって非常に焦る瞬間でしょう。しかし、ご安心ください。このエラーは、適切に対処すれば解決可能です。この記事では、この問題の根本原因を理解し、Windowsユーザーの皆様が迅速に解決できるよう、具体的な手順とPowerShellコマンドを解説します。結論から申し上げると、OSレベルの問題が原因であることが多いため、まずはAWSコンソールからのシステムログ(コンソール出力)と、RDP接続が可能であればWindowsイベントログを確認することが最優先です。
目次
1. AWS EC2: Instance status check failed とは?(概要と緊急度)
AWS EC2のステータスチェックには、主に以下の2種類があります。
- システムステータスチェック (System Status Check): AWS基盤側の問題(ハードウェア障害、ネットワーク障害など、EC2インスタンスが稼働している物理ホストの問題)を検出します。
- インスタンスステータスチェック (Instance Status Check): EC2インスタンスのOSレベルの問題を検出します。OSの起動失敗、リソース枯渇、設定エラー、重要なサービスの停止、OS内でのネットワーク設定の問題などが該当します。
今回発生している「Instance status check failed」は、後者のインスタンスステータスチェックが失敗している状態です。これは、EC2インスタンス上のOSが正常に起動または稼働できていないことを意味します。この状態では、通常RDP接続も不可能であり、サービス停止に直結するため、緊急度は非常に高い問題です。一刻も早い原因特定と対処が求められます。
2. 【最速】今すぐ試すべき解決策
まずは、以下の手順を上から順にお試しください。RDP接続が可能かどうかで、アプローチが変わります。
解決策1:AWSコンソールからの再起動とシステムログの確認(RDP接続不可・可能に関わらず)
多くのOSレベルの一時的な問題は、インスタンスの再起動で解決する場合があります。また、RDP接続ができない場合でも、AWSコンソールからシステムログ(コンソール出力)を確認することで、OSの起動状況を把握できます。
- AWSマネジメントコンソールにログインし、EC2ダッシュボードへ移動します。
- 「インスタンス」メニューから対象のEC2インスタンスを選択します。
- インスタンスを右クリックし、「インスタンスの状態」から「インスタンスを再起動」を選択し、確認プロンプトで「再起動」をクリックします。
- インスタンスが起動するまで数分待ち、ステータスチェックの状態を確認します。
- 再起動後も解決しない、または再起動前に状況を確認したい場合:
対象のインスタンスを選択した状態で、下部のタブから「モニタリング」→「インスタンスのシステムログを取得」をクリックします。
このログには、OSの起動プロセス中に表示されるメッセージ(Windows Serverであれば、ブートプロセスや重要なサービスのエラーメッセージなど)が含まれており、起動失敗の具体的な原因を示すヒントが得られる可能性があります。
特に、無限ループになっているWindows Updateや、OSが起動に失敗している旨のメッセージが確認できることがあります。
解決策2:Windowsイベントログの確認(RDP接続可能な場合)
もし奇跡的にRDP接続が可能であったり、一時的に接続できた瞬間に問題が発生した場合は、Windowsイベントログを確認することで、より詳細なエラー情報を得ることができます。PowerShellを使用すると、効率的にログをフィルタリング・表示できます。
# PowerShellでシステムイベントログの最新50件を表示
Get-WinEvent -LogName System -MaxEvents 50 | Format-List TimeCreated, Id, LevelDisplayName, Message
# PowerShellでアプリケーションイベントログの最新50件を表示
Get-WinEvent -LogName Application -MaxEvents 50 | Format-List TimeCreated, Id, LevelDisplayName, Message
# 特定のエラーレベルのイベントのみをフィルタリングする場合(例:エラーレベルのみ)
Get-WinEvent -FilterHashtable @{LogName='System'; Level=2} -MaxEvents 50 | Format-List TimeCreated, Id, LevelDisplayName, Message
# GUIでイベントビューアを開く場合
eventvwr.msc
これらのログを分析し、特に「エラー」や「警告」レベルのイベントの中から、インスタンスステータスチェック失敗時刻に近い時間帯のエントリを探してください。OSの起動失敗や、重要なサービス(例: DHCPクライアント、ネットワーク関連サービス)のクラッシュに関する情報が見つかることがあります。
3. AWS EC2: Instance status check failed が発生する主要な原因(複数)
「Instance status check failed」は、EC2インスタンスのOS内部で発生する様々な問題によって引き起こされます。主な原因としては以下のようなものが挙げられます。
- OSの起動失敗:
- ブートローダーの破損や設定ミス
- システムファイルの破損や不足
- ディスク容量の不足(特にシステムドライブ)
- Windows Updateが原因の起動ループやロールバック失敗
- 重要なシステムサービス(例: DHCP Client、Network Location Awarenessなど)の起動失敗
- 予期しないシャットダウンやクラッシュ後のOSの整合性問題
- リソース枯渇:
- CPU使用率が100%のまま張り付いている(無限ループするプロセスなど)
- メモリ不足によるOSの動作不安定やクラッシュ
- ネットワーク設定の問題(OS内部):
- OS内のファイアウォール設定が厳しすぎて、OS自体が外部との通信を確立できない、あるいは自身をブロックしている
- ネットワークアダプタのドライバ問題や破損
- IPアドレスやDNS設定の予期しない変更や誤設定
- 不正なソフトウェアや設定の適用:
- 互換性のないアプリケーションやドライバのインストール
- 誤ったレジストリ変更やグループポリシーの適用
- セキュリティソフトウェアによる過剰なブロック
4. AWS EC2で恒久的に再発を防ぐには
この種のエラーの再発を防ぐためには、予防的な対策と適切な運用が不可欠です。安定したEC2インスタンスの運用を目指しましょう。
- 定期的なバックアップとAMIの取得:OSが正常な状態のときに定期的にスナップショットを取得し、AMI (Amazon Machine Image) を作成することで、問題発生時に迅速に復旧できるようになります。特に、大きな変更(OSアップデート、アプリケーションインストールなど)の前には必ず取得しましょう。
- Windows Updateの計画的な適用:Windows Updateはシステムのセキュリティと安定性にとって重要ですが、自動適用ではなく、メンテナンスウィンドウを設けて手動で適用し、その都度システムの動作を確認することをお勧めします。不具合のあるアップデートが適用されるリスクを低減できます。
- リソースの適切な監視と調整:AWS CloudWatchを利用して、CPU使用率、メモリ使用率(CloudWatch Agentが必要)、ディスクI/O、ネットワークI/Oなどのメトリクスを継続的に監視します。しきい値を設定してアラームを発することで、リソース枯渇による問題発生を未然に防ぎます。
- 自動復旧 (Auto Recovery) の設定:システムステータスチェック失敗時にインスタンスを自動的に再起動する「Auto Recovery」機能を設定できます。これにより、ハードウェア障害などのAWS基盤側の問題に対しては自動的に対処できるようになります。(Instance status check failedには直接対応しませんが、全体の可用性向上に貢献します。)
- 厳格な変更管理:EC2インスタンスへの変更は、承認プロセスを経て計画的に実施し、変更履歴を記録します。予期せぬ問題が発生した場合に、原因究明を容易にします。
- EC2 Rescue for Windows Serverの活用:RDP接続できない場合のトラブルシューティングに役立つツールです。インスタンスに接続し、ログを収集したり、一般的な問題を自動修正したりできます。万が一の状況に備えて使い方を習熟しておくことをお勧めします。
これらの対策を講じることで、「Instance status check failed」のリスクを大幅に低減し、AWS EC2インスタンスの安定した運用を実現できるでしょう。