Adobe After Effectsをご利用中に「GPU render failed」というエラーに遭遇し、お困りではありませんか？ 大切なプロジェクトのレンダリングが止まってしまうと焦りますよね。ご安心ください、このエラーは多くの場合、簡単な手順で解決できます。
このエラーは通常、お使いのグラフィックカード（GPU）のメモリ不足（VRAM不足）や、GPUドライバーの互換性問題、またはAfter Effectsの内部設定に起因して発生します。幸いなことに、ほとんどのケースではPCの再起動や設定の調整、ドライバーの更新で解決可能です。
この記事では、Windowsユーザー向けに、この問題を迅速に解決するための具体的な手順を、初心者の方でも安心して試せるように丁寧に解説します。まずは「最速で試すべき解決策」から試してみてください。
目次
1. After Effects: GPU render failed とは？（概要と緊急度）
「GPU render failed」エラーは、Adobe After Effectsがグラフィックプロセッシングユニット（GPU）を使ってビデオ素材やエフェクトのレンダリングを試みた際に、何らかの問題が発生し、その処理を完了できなかったことを示すメッセージです。
このエラーが表示されると、レンダリングが停止し、作業を続行できなくなるため、プロジェクトの進行を妨げる非常に緊急度の高い問題となります。しかし、ほとんどの場合はハードウェアの故障ではなく、一時的なリソース不足やソフトウェアの設定、ドライバーの問題が原因であり、適切な対処をすればすぐに解決できる可能性が高いです。
慌てずに、これからご紹介する手順を上から順に試していきましょう。
2. 【最速】今すぐ試すべき解決策
解決策1：【最も簡単な方法】PCを再起動する
After EffectsやPCを長時間起動していると、VRAM（GPUメモリ）が断片化したり、一時ファイルが蓄積されたりして、GPUリソースが不足することがあります。PCの再起動は、システム全体をリフレッシュし、VRAMを含むすべてのメモリをクリアする最も手軽で効果的な方法です。
まずは、この最も簡単な方法から試してみましょう。多くのケースで、これだけで問題が解決することがあります。
# PCを再起動する手順
1. 開いているすべてのアプリケーション（After Effectsを含む）の作業を保存します。
2. Windowsのスタートメニューを開き、「電源」アイコンをクリックします。
3. 「再起動」を選択し、PCが完全に再起動するのを待ちます。
4. PCが起動したら、After Effectsを再度起動し、問題のプロジェクトを開いてレンダリングを試してください。解決策2：After Effectsのディスクキャッシュをクリアする
After Effectsは、プレビューやレンダリングを高速化するために、一時的なキャッシュファイルをディスク上に保存します。このキャッシュが破損したり、容量が過剰になったりすると、GPUレンダリングの妨げになることがあります。
PCの再起動で解決しない場合は、After Effectsのディスクキャッシュをクリアしてみましょう。
# After Effectsのディスクキャッシュをクリアする手順
1. After Effectsを起動し、メニューバーから「編集」>「環境設定」>「メディア＆ディスクキャッシュ」を選択します。
2. 「ディスクキャッシュ」セクションにある「ディスクキャッシュを空にする」ボタンをクリックします。
3. 確認メッセージが表示されたら「OK」または「はい」をクリックして、キャッシュを削除します。
4. After Effectsを一度終了し、再度起動してからレンダリングを試してください。解決策3：GPUドライバーを最新の状態に更新する
GPUドライバーが古い、またはAfter Effectsのバージョンと互換性がない場合、GPUレンダリングエラーが発生することがあります。最新のドライバーには、パフォーマンスの向上やバグ修正が含まれているため、定期的な更新が推奨されます。
お使いのGPUメーカー（NVIDIA、AMD、Intelなど）の公式サイトから、最新かつ安定版のドライバーをダウンロードしてインストールしてください。クリーンインストールを推奨します。
# GPUドライバーを最新版に更新する手順 (例: NVIDIAの場合)
1. お使いのGPUのメーカーとモデル名を確認します。（例: NVIDIA GeForce RTX 3080）
- Windowsのスタートメニューを右クリックし、「デバイスマネージャー」を選択します。
- 「ディスプレイアダプター」を展開し、お使いのGPUの名前を確認します。
2. メーカーの公式サイトにアクセスします。（例: NVIDIAの場合は https://www.nvidia.com/drivers ）
3. お使いのGPUのモデル、Windowsのバージョン（64ビットなど）を選択し、最新のドライバーを検索してダウンロードします。
4. ダウンロードしたインストーラーを実行します。インストールの種類で「カスタム」を選択し、「クリーンインストールの実行」にチェックを入れることを推奨します。
5. 指示に従ってインストールを完了し、必要であればPCを再起動します。
6. 再起動後、After Effectsを起動し、レンダリングを試してください。3. After Effects: GPU render failed が発生する主要な原因（複数）
「GPU render failed」エラーは、複数の要因が絡み合って発生することがあります。主な原因を理解することで、より根本的な解決策を見つける手助けとなります。
3.1. VRAM（GPUメモリ）不足
After Effectsは、高解像度のフッテージ、複雑なエフェクト、多数のレイヤーを扱う際に大量のVRAMを消費します。お使いのGPUのVRAM容量が不足しているか、他のアプリケーションがVRAMを大量に使用している場合に、このエラーが発生しやすくなります。
- 大規模なプロジェクト: 4K以上のフッテージ、高ビットレートの動画、多数のエフェクト。
- 他のアプリケーションとの競合: ゲーム、3Dモデリングソフトウェア、他の動画編集ソフトなどがバックグラウンドで起動している。
3.2. GPUドライバーの互換性またはバージョン問題
GPUドライバーは、オペレーティングシステムとGPUを接続する重要なソフトウェアです。ドライバーが古い、またはAfter Effectsの特定のバージョンと互換性がない場合、GPUレンダリングの処理が正しく行われず、エラーにつながります。
- 古いドライバー: 最新のAfter Effectsの機能に対応していない。
- バグのあるドライバー: 特定のバージョンに既知の問題がある。
- OSのアップデートとの不一致: Windowsのメジャーアップデート後にドライバーの更新が必要になる場合。
3.3. CUDA設定（NVIDIAユーザーの場合）
NVIDIA製GPUを使用している場合、After Effectsのプロジェクト設定や環境設定でCUDAが正しく設定されていないか、最適化されていない場合に問題が生じることがあります。CUDAはGPUアクセラレーションを可能にする技術です。
- プロジェクト設定の不一致: 「ファイル」>「プロジェクト設定」>「ビデオレンダリングおよびエフェクト」で、レンダラーが「Mercury GPU アクセラレーション（CUDA）」に設定されているか、または「ソフトウェア専用」に一時的に切り替える必要がある場合。
- NVIDIAコントロールパネルの設定: パフォーマンスや互換性に影響を与える設定。
3.4. After Effectsのバージョンまたはバグ
After Effects自体に既知のバグがある場合や、使用しているバージョンが特定のOSやGPUドライバーの組み合わせで問題を引き起こすことがあります。また、古いバージョンのAfter Effectsを使用している場合、最新のGPUやOSとの互換性が低いことがあります。
4. Adobe After Effectsで恒久的に再発を防ぐには
一時的な解決策だけでなく、将来的に「GPU render failed」エラーの再発を防ぐための恒久的な対策も講じていきましょう。
4.1. GPUドライバーを常に最新の状態に保つ
前述の通り、GPUドライバーは非常に重要です。常にメーカー公式サイトから最新かつ安定版のドライバーをダウンロードしてインストールする習慣をつけましょう。特にAfter Effectsのメジャーアップデート後には、ドライバーの更新を確認することが重要です。
4.2. After Effectsのパフォーマンス設定を最適化する
After Effectsの環境設定を見直すことで、VRAMやシステムリソースの利用効率を高めることができます。
- メモリとマルチプロセッシング: 「編集」>「環境設定」>「メモリとパフォーマンス」で、「After Effectsに割り当てるRAM」と「他のアプリケーション用に確保するRAM」のバランスを調整します。After Effectsに十分なRAMを割り当てるように設定しましょう。
- ディスクキャッシュの最適化: 「編集」>「環境設定」>「メディア＆ディスクキャッシュ」で、ディスクキャッシュの最大サイズを適切に設定し、SSDなど高速なドライブをキャッシュ保存先として指定することをおすすめします。
- GPUアクセラレーションの設定: 「ファイル」>「プロジェクト設定」>「ビデオレンダリングおよびエフェクト」で、レンダラーが「Mercury GPU アクセラレーション（CUDA/OpenCL）」に設定されているか確認し、問題が発生する場合は一時的に「ソフトウェア専用」に切り替えてテストしてみましょう。
4.3. VRAM使用量を監視し、プロジェクトを最適化する
VRAM不足が頻繁な原因である場合、プロジェクトの設計段階からVRAM効率を意識することが重要です。
- タスクマネージャーでの監視: Windowsのタスクマネージャー（
Ctrl+Shift+Esc）を開き、「パフォーマンス」タブの「GPU」セクションでVRAM使用量をリアルタイムで監視できます。After EffectsがVRAMをどれだけ使用しているか確認し、しきい値を超えていないか確認しましょう。 - プロジェクトの軽量化: 不要なレイヤーやエフェクトを削除する、高解像度の素材をプロキシ（低解像度の代替ファイル）に置き換えて編集する、コンポジションの解像度を編集中は一時的に下げるなどの方法で、VRAM消費を抑えることができます。
- ハードウェアアップグレードの検討: 頻繁にVRAM不足に陥る場合は、VRAM容量の多いGPUへのアップグレードを検討する価値があります。
4.4. After Effectsを最新バージョンにアップデートする
Adobeは、After Effectsのパフォーマンス向上やバグ修正のために定期的にアップデートをリリースしています。最新バージョンでは、GPUの利用効率が改善されている場合があるため、Creative Cloudデスクトップアプリを通じてAfter Effectsを常に最新の状態に保つことをお勧めします。
4.5. CUDA設定の確認（NVIDIAユーザー向け）
NVIDIA GPUユーザーは、After Effectsの設定だけでなく、NVIDIAコントロールパネルの設定も確認しましょう。
# NVIDIAコントロールパネルの設定確認手順
1. デスクトップを右クリックし、「NVIDIA コントロールパネル」を開きます。
2. 左側のメニューから「3D 設定の管理」を選択します。
3. 「プログラム設定」タブで「Adobe After Effects」を選択（または追加）し、以下の設定を確認します。
- 「CUDA - GPU」: すべての利用可能なGPUが選択されているか確認します。
- 「電源管理モード」: 「パフォーマンス最大化を優先」に設定されていることを確認します（ノートPCではバッテリー消費が増える可能性があります）。
4. 設定を適用し、After Effectsでレンダリングを試してください。これらの対策を講じることで、「GPU render failed」エラーの発生を大幅に減らし、安定したAfter Effectsでの作業環境を維持できるはずです。もし上記の方法を試しても解決しない場合は、Adobeサポートへの問い合わせや、PCのハードウェア診断を検討することをお勧めします。
“`