【Tenable Nessus】Plugin timeout エラーの完全解決ガイド【現場のプロが教える原因と対策】

Tenable Nessusを使った脆弱性スキャン中に「Plugin timeout」エラーに遭遇する場合があります。このエラーは単にプラグインの実行時間が長すぎたことを示すだけでなく、その裏にはターゲットシステムのリソース不足、ネットワークの問題、あるいはNessusスキャナー自体の健全性に関わる、より深い原因が潜んでいることが多いのです。

長年の現場経験を持つシニアITエンジニアとして、この「Plugin timeout」エラーが単なる警告ではなく、潜在的なシステムトラブルの前兆であると捉えることの重要性を深く認識しています。本記事では、このエラーの原因をプロの視点で深掘りし、即座に試せる解決策から、再発防止のためのシステム設計・運用アドバイスまで、具体的なHTMLマークアップを交えて徹底解説します。

結論:最も速く解決する方法

「Plugin timeout」エラーに直面した際、まず試すべきは以下のシンプルな手順です。多くの場合、これらの調整で一時的、あるいは恒久的に問題を解決できます。

  1. スキャンポリシーのタイムアウト設定を一時的に緩和する:特定のスキャンプロファイルやポリシーが、ターゲットの応答速度に対して厳しすぎる場合があります。NessusのUIから、以下の設定値を一時的に増やしてみてください。
    • Nessus Web UIにログインし、対象の「Policy」または「Scan」を編集します。
    • 「Settings」タブを開き、「Advanced」セクションを展開します。
    • 「Performance」サブセクションにある以下の値を調整します。
      • Plugin Timeout: デフォルトの320秒を、例えば 600 (10分) や 900 (15分) に増やします。
      • Network Timeout: 必要に応じて、これも 5 (秒) から 1020 に増やします。

       

      注意: これらの値をむやみに大きくしすぎると、スキャン時間が大幅に伸びる可能性があります。まずは段階的に調整し、効果を確認してください。

       

    • 変更を保存し、スキャンを再実行します。
  2. ターゲットシステムの負荷状況を確認する:タイムアウトの多くは、スキャン対象のサーバーやデバイスがNessusからの大量のリクエスト処理に追いついていないことが原因です。スキャン中に以下の項目を確認してください。
    • CPU使用率、メモリ使用率、ディスクI/O (Input/Output) 状況を監視ツールやOSのコマンド(例: Linuxの top, htop, iostat; Windowsのタスクマネージャー、パフォーマンスモニター)で確認します。
    • もし負荷が高い状態であれば、スキャンを停止し、システムのリソース状況が落ち着いてから再試行するか、スキャン対象を絞ることを検討します。
    • 特に、ウェブサーバーやデータベースサーバーなど、常に高い負荷がかかっているシステムでは発生しがちです。
  3. ネットワーク経路上の障害やセキュリティデバイスの確認:Nessusスキャナーとターゲットシステム間のネットワーク遅延やパケットロスもタイムアウトの原因となります。また、ファイアウォールやIPS/IDSがNessusのスキャンを不審な通信としてブロックしている可能性も考慮します。
    • スキャナーからターゲットシステムに対して pingtraceroute コマンドを実行し、ネットワーク接続の健全性を確認します。
      ping <ターゲットIPアドレス>
      traceroute <ターゲットIPアドレス>
    • 間に存在するファイアウォール、IDS/IPS、ロードバランサーなどのネットワークセキュリティデバイスのログを確認し、Nessusからの通信がブロックされていないか確認します。必要であれば、スキャン時間中のみ一時的にルールを緩和する、あるいはホワイトリストに追加することを検討します。

【プロの視点】このエラーの真の原因と緊急度

「Plugin timeout」は、単にNessusプラグインが完了するまでに時間がかかりすぎたという表面的なメッセージに過ぎません。シニアエンジニアの視点から見ると、このタイムアウトは以下のようなより深刻な問題の兆候であることがほとんどです。

このエラーの技術的な深掘り

1. **ターゲットシステムのリソース枯渇・不応答:**
* 最も一般的な原因です。スキャン対象のサーバーやネットワークデバイスが、Nessusからの一斉プローブやリクエストに耐えきれず、CPU、メモリ、ディスクI/O、ネットワーク帯域が飽和状態になり、応答が遅延または停止します。特に、脆弱性診断は通常運用時よりも多くのリソースを消費させるため、そのシステムが元々リソース不足だと顕著になります。
* 特定のサービス(Webサービス、データベース、認証サービスなど)が、Nessusからの異常なリクエストパターン(例: 多数のログイン試行、特殊なURLリクエスト)によってハングアップしたり、クラッシュしたりすることもあります。

2. **ネットワークの輻輳または不安定性:**
* スキャナーとターゲット間のネットワーク経路が混雑している、ケーブルが断線しかかっている、ネットワーク機器(スイッチ、ルーター)が過負荷になっているといった状況も、パケットロスや遅延を引き起こし、プラグインのタイムアウトに繋がります。
* ファイアウォールやIDS/IPSがNessusの通信を「攻撃」と誤認し、トラフィックをドロップしたり、スロットリング(帯域制限)をかけたりする場合も同様です。

3. **Nessusスキャナー側のリソース不足:**
* 大規模なスキャンや、多くのスキャンを同時に実行している場合、Nessusスキャナー自体のCPU、メモリ、ディスクI/Oがボトルネックになることがあります。Nessusは脆弱性情報のデータベースをディスクに保持し、スキャン結果も書き込みます。I/O性能が低いと、プラグインの実行や結果の処理が遅延し、タイムアウトを引き起こす可能性があります。

4. **特定の「重い」プラグイン:**
* 一部のNessusプラグインは、その性質上、非常に多くのリクエストを送信したり、ターゲットシステムの深い部分まで探るために長時間を要したりするものがあります。例えば、辞書攻撃的なパスワード推測プラグインや、多数のWebアプリケーションの脆弱性を探るプラグインなどが該当します。

現場でよくある見落としポイント

* **「タイムアウトは仕方ない」という誤解:** タイムアウトは単なる「時間切れ」ではありません。多くの場合、背後にあるシステムやネットワークの問題を指し示しています。これを放置すると、重要な脆弱性を見逃したり、最悪の場合、脆弱性スキャンによって業務システムが停止する事態に発展したりします。
* **対象システム側のログ確認の怠り:** Nessusスキャナー側のログだけでなく、スキャン対象のOS(Windowsイベントログ、Linuxのsyslogなど)やアプリケーションのログを確認することは非常に重要です。そこに、Nessusからのトラフィックを受けた際のエラーや警告が記録されていることがあります。
* **ネットワーク設計者や運用者との連携不足:** スキャン開始前に、ネットワーク担当者やシステム運用担当者と十分な情報共有を行わず、スキャンによる影響や、ファイアウォールなどのセキュリティデバイスによるブロックの可能性を考慮しないケースが見られます。
* **Nessusスキャナーのヘルスチェック不足:** Nessusスキャナー自体が正常に稼働しているかを定期的に確認しないことがあります。nessuscli diagnose コマンドなどで、スキャナーのリソース状況や設定の健全性を確認することは重要です。

緊急度

* **単発のPlugin Timeout(中程度):** 特定のホストやプラグインで一度だけ発生した場合。一時的なネットワークの揺らぎや、ターゲットシステムの一時的な高負荷が原因の可能性があります。すぐに業務に支障が出るわけではありませんが、根本原因は突き止めるべきです。
* **頻発するPlugin Timeout(高):** 複数のホストやスキャンで、頻繁にPlugin Timeoutが発生する場合。これは、Nessusスキャナー自体、ターゲットシステム群、またはネットワークインフラのいずれかに深刻な問題がある可能性が高いです。**脆弱性診断の品質低下、重要な脆弱性の見逃し、さらにはスキャンによって業務システムが不安定になるリスクが高まります。** 最優先で調査・対応が必要です。

詳細な解決策と追加のトラブルシューティング

「結論」で提示した解決策に加え、さらに深掘りした具体的な対応策と、その他のトラブルシューティングのヒントを紹介します。

1. Nessusスキャンポリシーの最適化

Nessusのポリシー設定は、スキャンの挙動を大きく左右します。慎重に調整することで、タイムアウト問題を解決できる場合があります。

  1. 「Plugin Timeout」と「Network Timeout」の調整:前述の通り、これらの値を調整することで、プラグインの実行時間やネットワーク応答の許容時間を長くします。
    • Plugin Timeout: Advanced -> Performance で設定。デフォルト320秒。
      推奨: まず 600 (10分) に設定し、改善が見られない場合は 900 (15分) まで試します。 
    • Network Timeout: Advanced -> Performance で設定。デフォルト5秒。
      推奨: ネットワークが不安定な場合、10 または 20 に増やしてみます。ただし、大幅に増やすとスキャンが非常に遅くなります。 
  2. 同時実行設定の調整:Nessusが同時に実行するチェック数やホスト数を減らすことで、スキャナーおよびターゲットシステムの負荷を軽減できます。
    • Max simultaneous checks per host: Advanced -> Performance で設定。デフォルト5。
      推奨: ターゲットの負荷が高い場合、31 に減らします。 
    • Max simultaneous hosts per scan: Advanced -> Performance で設定。デフォルト30。
      推奨: スキャン対象ホストが多い、またはNessusスキャナーのリソースが限られている場合、105 に減らします。 
  3. スキャンターゲットのセグメンテーション:大規模なネットワーク全体を一度にスキャンせず、ターゲットIPアドレス範囲を小さなサブネットやグループに分割してスキャンすることで、Nessusの負荷とネットワークの負荷を分散できます。
  4. 特定プラグインの無効化(一時的措置):もし特定のプラグインが常にタイムアウトするようであれば、そのプラグインを一時的に無効化してスキャンを完了させ、後でそのプラグインだけを個別に実行するか、原因を特定して対処します。
    • 「Plugins」タブで、問題の原因となっている可能性のあるプラグイン(NessusレポートでタイムアウトしたプラグインIDが特定できる場合)を検索し、無効化します。
  5. 「Probe services on all ports」設定の見直し:Nessusが全てのポートでサービスをプローブするように設定されている場合(デフォルトでは無効)、スキャン時間が大幅に増加し、タイムアウトの原因となる可能性があります。必要な場合を除き、この設定は無効にしておくか、対象ポートを限定します。
    • Advanced -> Port Scanning -> Probe services on all ports を確認。

2. ターゲットシステムの健全性確認

対象システム側の問題を特定するために、より詳細な調査を行います。

  1. リソース使用率の長期監視:スキャン中だけでなく、スキャン前後のシステムのCPU、メモリ、ディスクI/O、ネットワークI/Oの傾向を監視ツール(Zabbix, Prometheusなど)で確認します。特定のサービスがスキャン中に異常なリソース消費をしていないか確認します。
  2. OSおよびアプリケーションログの分析:スキャン中にターゲットシステムのOSログ(例: Windowsイベントログのシステム、アプリケーション、セキュリティログ; Linuxの/var/log/messages, auth.log, アプリケーション固有のログ)を詳細に分析します。
    • 「Nessus」やスキャン元IPアドレスに関連するエラー、警告、プロセス異常終了のメッセージを探します。
    • セキュリティソフトウェア(アンチウイルス、EDRなど)がNessusの活動をブロックしている兆候がないか確認します。
  3. サービス停止の確認:スキャン中に一時的に停止または応答しなくなるサービスがないか確認します。

3. ネットワーク環境の診断

ネットワークが原因である場合の具体的な調査方法です。

  1. ファイアウォール/IDS/IPSログの確認:Nessusスキャナーとターゲットシステム間の経路にある全てのネットワークセキュリティデバイスのログを精査し、Nessusからの特定のポートやプロトコルへの通信がブロック、ドロップ、または異常なトラフィックとしてアラートされていないか確認します。必要であれば、スキャン元IPアドレスからの通信を許可する一時的なルールを追加します。
  2. MTR (My Traceroute) の利用:traceroute よりも詳細なネットワーク経路診断ツールとして mtr を利用し、どのホップでパケットロスや遅延が発生しているかを特定します。
    mtr <ターゲットIPアドレス>
  3. ネットワークキャプチャ:Nessusスキャナー側とターゲットシステム側の両方で tcpdump や Wireshark を使ってネットワークトラフィックをキャプチャし、Nessusからのリクエストがターゲットに到達しているか、ターゲットからの応答があるか、パケットロスが発生していないかなどを詳細に分析します。

再発防止のためのシステム設計・運用アドバイス

「Plugin timeout」のようなエラーは、一時的な対処だけでなく、根本的な原因を取り除き、再発させないための設計・運用が重要です。以下にシニアエンジニアからのアドバイスを提示します。

1. スキャン計画の最適化と標準化

* **スキャン対象の適切なセグメンテーション:** 大規模な環境では、一括スキャンは避け、IPアドレス範囲やシステム種別(例: Webサーバー群、DBサーバー群)でスキャン対象を細かく分割しましょう。これにより、特定のシステムへの負荷集中を防ぎ、問題発生時の影響範囲を限定できます。
* **リソースに余裕のある時間帯でのスキャン実行:** 業務時間外(夜間、休日など)にスキャンを実施することを基本とします。これにより、システムへの影響を最小限に抑えられます。
* **異なるスキャンプロファイルの使い分け:**
* **広範囲/軽量スキャン:** 定期的なヘルスチェックや、新しく追加された資産の発見のために、ポートスキャンやOS判別など、ごく基本的なプラグインのみを適用した軽量なスキャンプロファイルを用意します。
* **深掘り/詳細スキャン:** より深く脆弱性を診断する必要があるシステムに対しては、詳細なプラグインを含むプロファイルを適用します。ただし、これは計画的かつ限定的に実行します。
* **ベンチマークスキャンの実施:** 新しいシステムをスキャン対象に追加する際や、スキャナーのバージョンアップ後には、対象システムに大きな影響が出ないかを確認するためのベンチマークスキャン(短い時間で部分的なスキャン)を実施し、パフォーマンスを評価するプロセスを導入します。

2. Nessusスキャナーとターゲットシステムのリソース監視強化

* **Nessusスキャナーの専用リソース確保:** Nessusスキャナーは、他のサービスとリソースを競合しないよう、専用の物理または仮想サーバーにデプロイし、十分なCPU、メモリ、特に高速なディスクI/O(SSD推奨)を割り当てます。
* **定期的なNessusスキャナーの診断:** Nessusの nessuscli diagnose コマンドを定期的に実行し、システムの健全性、データベースの状態、リソース使用状況などを確認する運用フローを確立します。
* **ターゲットシステム側の監視強化:** スキャン対象となるサーバーやネットワーク機器について、CPU、メモリ、ディスクI/O、ネットワーク帯域の利用率を常時監視する仕組みを導入し、閾値を超えた場合にアラートを出すようにします。これにより、スキャンによる過負荷が原因であるか、あるいはシステム自体が元々ボトルネックを抱えているのかを早期に判断できるようになります。

3. ネットワーク設計とセキュリティポリシーの再評価

* **スキャンセグメントとNessus間のネットワーク帯域確保:** 大規模なスキャンを実行する環境では、Nessusスキャナーが配置されるネットワークセグメントと、スキャン対象が存在するセグメント間のネットワーク帯域が十分であるかを確認します。必要であれば、専用のVLANやルーティングを設定し、スキャン用トラフィックの影響を最小限に抑えます。
* **ファイアウォール・IDS/IPSルールの最適化:**
* スキャン元のNessus IPアドレスからの通信を、スキャン対象に必要なポートとプロトコルについてホワイトリストに登録します。
* 脆弱性スキャン中にのみ適用される、一時的なセキュリティポリシー(IDS/IPSの検出レベルを下げる、特定のルールをバイパスする、など)を準備し、スキャン完了後に元のポリシーに戻す運用を検討します。
* 誤検知によるブロックが発生しないよう、定期的にセキュリティデバイスのログをレビューします。

4. 定期的なレビューとドキュメント化

* **スキャンレポートとログの定期レビュー:** タイムアウトが発生したプラグイン、ホスト、およびその時のシステム状況(Nessusスキャナー、ターゲットシステム、ネットワーク機器のログ)を定期的にレビューし、傾向を分析します。
* **設定変更履歴の管理:** Nessusスキャンポリシーやシステム設定の変更履歴を適切に管理し、変更が問題解決に繋がったのか、あるいは新たな問題を引き起こしたのかを追跡できるようにします。
* **手順書の整備:** 「Plugin timeout」エラーが発生した際のトラブルシューティング手順や、推奨されるスキャンポリシー、再発防止策などをドキュメント化し、チーム内で共有します。

まとめ

Tenable Nessusの「Plugin timeout」エラーは、一見すると単なる時間切れに見えますが、その根底にはターゲットシステムのリソース不足、ネットワークの不安定さ、Nessusスキャナー自体の問題など、多岐にわたる複雑な原因が潜んでいます。

本記事で紹介した「結論:最も速く解決する方法」を参考に、まずはスキャン設定の見直しとターゲットシステムの状況確認から着手し、一時的な解決を図ってください。そして、「プロの視点」で解説した技術的深掘りや現場での見落としポイントを参考に、根本原因の特定に努めてください。

最終的には、「再発防止のためのシステム設計・運用アドバイス」を実践することで、将来的に同様のエラーに悩まされることなく、より効率的で信頼性の高い脆弱性管理体制を確立できるでしょう。脆弱性スキャンはセキュリティ対策の要です。このエラーを乗り越え、より堅牢なシステム運用を目指しましょう。